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そうして、現在の二人 5
生徒会室で別れ、2人は教室に戻った。
道中、鼓に刺さるような視線が送られるが、そんなことでへこたれる鼓ではない。
むしろ、鬱陶しいなど悪態をついて一蹴してしまうだろう。
だが、密かに刺さるような視線ではなく舐め回すような、愛おしいものを見るような視線も混じっているのを、鼓は知る由もない。
遼介が教室に戻ると、わらわらと人だかりが出来た。その中1人が遼介の腕をとる。
「なぁ遼介、職員室まで付いてきてくれないか?」
「あ、オレも行く!」
その1人に引っ付くのがもう1人。
氷川に取り入ろうとする輩がいる一方、遼介にも普通に友達がいる。小学校からの、つまりは腐れ縁の2人だ。
最初に職員室に付いてきてくれと言ったのが、柴 隆盛 。
オレも行くと言ったのが野沢 詩帆 。
どちらも、遼介が鼓と付き合っていることを容認している。
「はぁ...」
遼介は隆盛と詩帆を見て盛大にため息を零した。
「なんだよ」
「つーくん見たあとにお前ら見ると...なんかこう、むさ苦しい」
「「おい」」
職員室に行く、という名目で裏庭に連れてこられた遼介に、詩帆が詰め寄る。
「さぁ...話してもらおうか」
一見険悪な雰囲気。しかしながら、全くもってこれは険悪ではない。じゃれているのだ。
「今日こそは鼓くんの話を聞かせろ!!」
「嫌だ」
「即答かよ?!」
「遼介、話しておかないとあとが面倒臭いぞ。詩帆だからな」
「そう言ってお前も聞きたがってたじゃん!」
「...隆盛」
「そんな冷たい目で俺を見るな、遼介」
さっと逸らされる視線。遼介がさらに隆盛も見続けるとすまない、俺も聞きたいと白状した。
遼介が鼓と付き合ったと2人に言った途端、詩帆は絶叫した。
何せ、詩帆は鼓のファンクラブ創設者だ、叫ぶなという方が無理な話である。
そして、鼓の話を聞かせろと延々と遼介に迫っているのだ。
「もう、面倒臭い。話せばいいんだろ話せば」
やっと観念した!と喜ぶ詩帆。早速ベンチの真ん中に遼介を座らせ、両サイドを隆盛と詩帆が囲む。
「昼ごはんの時はどうだった?」
「可愛いかった。食べてる姿が優雅で、なのに美味しくて仕方がないって顔して微笑む。でもたまに、『先輩、ご飯美味しくなかったら残していいですからね?』って言って心配してくれる。可愛い」
「くっ...天使!」
「あと、つーくんに尿欲しいなって思ってることバレた」
「あー、まじか.........ってマジか?!」
「なんで2回言った」
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