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会う、会わせろ、会わせない 4

ポケットに忍ばせたイヤホン。それは鼓のカバンにこっそりと付けた盗聴器に繋がっていた。 線があると怪しまれるから、ワイヤレスイヤホンにしてある。なるほど、用意周到だ。 「え、遼介...まさかそれ」 詩帆が苦笑いする。まさかだよな、盗聴器なんかじゃないよな、と。 「静かにして、つーくんの声が聞こえない」 「変質者!」 なんとでも言え、と遼介は無視してイヤホンに集中する。 『だから、ここにこの公式を...』 『公式って、どれ?』 『.........これ』 遼介は思わず吹き出した。鼓の苛立ちが手に取るように分かるからだ。 鼓は一度言われたことは忘れないため、相手が公式を覚えていないことに苛立ちを感じているようだった。 心の中で「そのくらい覚えてろよ馬鹿」とでも罵っていることだろう。 『これって、どれ?』 『そこの青字で書かれたやつ』 『あ...あー、これか』 『はぁ...』 「くっ...ふふっ.........」 遼介が笑いを堪えていると、詩帆が横から突撃してきた。 「なんだよ、鼓くんそんな面白いことしてるの?聞かせろよ!」 「詩帆、うるさいぞ」 「隆盛!だって酷くない?!自分だけ聞いてさ!」 「つ...涼川くんは、遼介のものらしいからな。誰にも聞かせたくないんだろう」 隆盛が鼓と呼びそうになった途端、遼介が鋭く睨みつけたため隆盛はすぐに訂正した。 『ありがとう、涼川』 『ううん、別に大丈夫だから』 問題を解き終わったのか、そこからの会話は聞こえない。 鼓は別に見下している訳では無いのだ、と遼介は思っている。現に鼓はこうやって勉強を教えてやったりもする。その際、一切貶すようなことは言わないし(心の中は置いといて、だ)愚痴も言わない。 ただ、なんの苦労もせず上に登りきりそこでゆったり足を伸ばしているのだ気に入らないのだ。 鼓は、頑張ってる人には無償で手を貸す。 だが、頑張ろうともせず、むしろそんな努力なんて無駄だ、権力が上なのだと叩くやつが嫌いで、手を貸す気にもならないだけだ。 「つーくん...可愛い、大好き」 隆盛と詩帆はげんなりした。10年以上つるんできた腐れ縁の友人の惚気顔など見たくなかったと。 「惚気てないのに、惚気ているような見えるな」 「ほんとそれ!」 「うるさい」 盗聴器を外し、なんとなく遼介が上を見上げると、鼓のいる3階の教室の窓から鼓が見えた。 「「あ」」 鼓の口がぽかん、と空き、遼介も口を開けた。 目が、あった。 途端、鼓は誰にも見せたことのないようなニコッとした笑顔を見せたと思ったら、すぐに膨れっ面になった。 「?」 遼介が首をかしげてみせると。 『サボり』 鼓が口パクで伝えてきた。 生真面目な、鼓らしい発言だった。

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