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発言禁止令 6
「喋らないからせめて解いてください」という詩帆の願いを不承不承 叶え、詩帆はぐるぐる巻きから開放された。
「...っ…っ……っ」
喋りそうになるたび口を塞ぎ、また喋りたい衝動に駆られては黙る。
幾度となくそれが繰り返されるうちに、鼓が哀れに思い始め、最終的にちらちらと遼介を見るようになってしまった。
「.........はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
長い長いため息を吐いて、遼介は一言。
「...喋れば?」
「ありがとうございます遼介様様!」
「うるさい」
「死ぬかと思った...まじで。禁断症状出るかと思ったよ!鼓くんもありがとうね!」
自室から戻って再び遼介の膝の上に乗せられた鼓にも礼を言い、詩帆は深呼吸を繰り返している。
「紹介してもらった通り、俺は野沢 詩帆。遼介とは小学校の頃からの付き合いなんだ。宜しくね」
ぺこりと頭を下げる。遼介はそんなことしなくていいのに、と思いながらも何も言わなかった。
すると、詩帆が悪い顔をしてテーブルに身を乗り出して言う。
「...でさ、鼓くん。俺とも連絡先、交か「却下」俺鼓くんに聞いてんだけど?!」
被せて遼介が言う。先程は何も言わなかったが、連絡先を交換するのはどうにも好かないらしい。
「ちゃんと設定で俺以外登録出来ないようにしてるから、無駄だよ。それに、登録した次の日には相手の携帯がウイルスでデータ破損する」
「どんな機能付けちゃってんの?!そんなの最新機種でもないよね?!」
「この携帯の開発元がShiva電子機器株式会社だから」
ああ、と詩帆は納得し、いや納得出来るか!とさけんだ。Shiva電子機器株式会社は隆盛の会社である。そしてその家の息子の隆盛も機会系統をいじるのが得意なのだ。
「あーもうやだ。2人ともグルだったのか…」
鼓くんの連絡先が欲しいよぉ...と項垂れる詩帆。ソファーに座っている鼓に向かって上目遣いしたが、遼介によって鼓の目を塞がれてしまい敢え無く無意味となる。
曰く「目が腐るから」
「鼓くん、それ解除出来ないの?」
目を塞がれた鼓に問う。
「出来ますけど...そこまで欲しいんですか?」
「出来る…のか」
「さすがつーくん」
今度はぱぁっと顔を晴れやかにさせる詩帆と、簡単に解除されてしまうことに項垂れる隆盛という構図が出来上がった。
遼介は、親バカならぬ恋人バカだ。
「俺とお友達になってくれたら、遼介の小さい頃の写真あげるよ?」
「.........解除、しようかな」
「帰れ!」
遼介の怒りによって、詩帆は隆盛に強制退出されられたのだった。
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