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いってらっしゃいのキス+エロ=の答えは? 3
「っふ...」
耳が弱いらしく、鼓は声を漏らした。
首を振って逃げようとするが、後頭部をぎゅっと抱き寄せられてしまう。
(長いって、長いってば、っ)
酸欠になりかけている鼓の目から、苦しさで水がこぼれ落ちる。
欲情の滲んだ瞳で、遼介は鼓を見、またキスを落とした。
なんども、なんども、なんども―。
「も、やっ...」
嫌だ、と言っているはずなのに、手は遼介の服を掴んでいる。言動の矛盾にも気づかないほど、鼓はキスに溺れていった。
「鼓」
名前を呼ばれてゆっくり目を開け、次の瞬間、鼓は大きく身を捩り抵抗した。
「せ、んぱ...っ」
パジャマの裾から、遼介の手が侵入したからだ。
(待って、待って待って待って!)
鼓の制止も聞かず、遼介は服を捲りあげた。ひやり、と肌が外気に触れる。
「ぁっ...」
驚いた鼓が口を開けた時、ぬるりと舌が舞い込む。
「ふぁっ...ん、ぅ...ぁ...っ」
片手は後頭部を抱き寄せ、もう片方の手は脇腹を擽るように撫でる。そして、舌は口腔を愛撫していた。
(やだ、...変になる..いやだ....気持ちいい)
支離滅裂なことを思いながらも、いつの間にか鼓は抵抗をやめ、もっと、と自ら舌を差し出していた。
「っ...はぁっ」
長い長いキスが終わり、鼓はくたり...と遼介にもたれ掛かった。唇はどちらのもの言えぬ唾液でてらてらと濡れ、官能的である。
対する遼介は満足そうな顔でもたれ掛かる鼓の頭に、撫でながら何度か唇を寄せていた。
「つーくん、よかった?」
「......はぁ...」
わざと聞くとは、意地が悪い。鼓の表情は苦悶ではなく、恍惚としていて答えははっきり出ているというのに。
「つーくん、いってきますのキスありがとう」
ちゅっと頬にキスをする。
(いってきます.........そうだった、先輩今日から居ないんだった)
キスで朦朧とした意識が、現実に戻りまた寂しさがぶり返す。その表情を見ていた遼介は鼓の耳元であることを呟いた。
途端、鼓は顔を真っ赤にし、遼介の腕から逃げ出した(腰が抜けているのか、横に逸れただけである)。
いってらっしゃいのキス+エロ=の答えは、「腰が立たなくなる」
鼓はそう学んだ。
『つーくん、帰ってきたら続きするから待っててね』
(〜〜〜〜〜〜っ!!)
その1日、鼓は茹で蛸のようになって過ごす羽目になった。
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