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氷点下ブリザード 1

ぼんやりと、遼介の出ていった玄関を見つめる。まるで、飼い主の帰りを待つペットのようだ。 ぺたん、と床に座り込み玄関のドアが開くのを待つも、ドアは開く事なく―― ―ガチャ なんと、開いた。 鼓が驚きで目を見開くと、入ってきたのは詩帆と隆盛である。 「...」 「鼓くん、目が、目が怖いよ。言いたいことは分かるよ、遼介じゃねぇのかよ、くそっって言いたいんだよね?」 「だから言っただろう詩帆、開ける前にノックしろと。こうなるのを見越してやったのか」 「そうだよ、悪い?遼介が言ったあと鼓くん絶対にこんな状態になってるだろうなって思ったんだもん!」 バキッと隆盛が詩帆を叩く。 「...涼川くん、すまない。遼介から君の世話を頼まれていて。入ってもいいか?」 鼓は無言でこくり、と頷いてリビングへと促した。 2人をソファーに座らせると、ティーポットを手にキッチンからリビングへ戻った。どうぞとも何も言わずに茶を入れ、出す。 「ありがとう、鼓くん」 「ありがとう」 「......」 ぺこり、と頭を下げる。 3人に面識はあるものの、遼介抜きでは喋ったことなどない。非常に、気まずい状態になってしまった。 それに―鼓は、遼介以外喋ろうという気もない。遼介が家に帰る前、つまり数分前、何度か鼓はくぎをさされていたのだ。「俺以外と、用がない限り喋っちゃだめだよ」と。 「...」 「...」 「...」 茶を啜る音、カップを置く音。それらを除けば、とても静かである。 「えっと.........鼓くん」 「...」 「もしかしてだけど、遼介に喋るなって言われてたりする?」 こく、と頷く。詩帆は天井を仰ぎ見た。 (あの独占欲バカ、本気で鼓くんを逃がさないつもりか) 大きくため息をついて、詩帆は鼓に言う。 「鼓くん、別に遼介の言いなりになんてならなくていいんだからね?嫌なことはちゃんと嫌って言わないと」 鼓は口を開いて、また閉じた。その行動に詩帆はクエスチョンマークを頭の上に出すが、隆盛はその意味が分かり筆談するか?と紙を差し出した。 鼓は緩く首を振った。 「用があるなら喋っていいので、大丈夫です」 「そうか」 「あと...別に、嫌じゃないです」 鼓は詩帆の方を見ながら言った。

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