99 / 435

氷点下ブリザード 4

その紙らを完全無視し踏みつけ、鼓は校内シューズをひっくり返し押しピンをバラバラと紙の上に落とした。 それらに見向きもせずシューズを履き、行きましょうかと2人を見る。 「鼓くん、これは、酷いね」 詩帆は鼓の嫌がらせについて実際には見たことがなく、苦い顔をした。 「遼介に言うんだよね?」 「言いません」 「?!」 目を見開く。鼓は押しピンを踏まないように2人の元に来た。 「なんでっ?」 「悪いことは言わない、遼介には言った方がいい」 「なんでって......こんな事で心配させたくないからです。先輩は今、家で将来のために頑張ってるんです、それを俺みたいなのが邪魔しちゃいけないから」 「「...」」 唖然とする詩帆と隆盛。 その理由は2つ。 1つ目は鼓が遼介に言わない理由のこと。言わなかったその分、遼介が余計に心配することをこの秀才が分かっていないことに驚いたのだ。 2つ目は遼介の言葉が届いていないということ。 遼介が常に鼓にかけている言葉は「つーくんのことなら何でもできる」だ。鼓が言うのであれば、遼介はすぐにでも鼓を匿い嫌がらせをした本人達を罰しこの学校から追い出すだろう。 鼓はその言葉を理解していると思っていたが違うようだ。 "俺みたいなの"鼓のその言葉から分かるのは、自分はそこまでしてもらうのに値しないということである。 遼介は鼓に価値があり「つーくんのためなら」と言うのに、鼓はそんなことはないと思い込んでいる。遼介の言葉は鼓には届いていないのだ。 「ワケあり、かぁ...」 「?...先輩?」 「ううん、何でもないよ。行こうか」 鼓には言っていないが、2人は遼介に鼓の現状を伝達することを頼まれているのだ。多分、遼介はこうなることを予想していたのだろう。 鼓には悪いが、このことは報告させてもらう。 「あれ、鼓くん。押しピンと紙拾って捨てないの?」 「そんなことするわけないじゃないですか。自分の書いた紙で滑って転んで、押しピンが背中に刺さればいいんです。因果応報ですよ、あはは!」 ((こっっわ............!))

ともだちにシェアしよう!