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叱責

なにも、鼓だって策もなく湯船に飛び込んだ訳では無い。 足元に固形石鹸を2つ、忍ばせておいたのだ。 ドアを堂々外して立て掛け、風呂の蓋を避け遼介は すっ転んだ。 「え"」 ゴン 「ぎゃ」 バタン 「う"わぁああ"あ"っ」 ガタタタタッ 遼介の声、鈍く何かが床に倒れる音、遼介の声、何かが倒れる音、遼介の叫び声、何かが次々と落下する音。 一部始終を全て目を瞑ってやり過ごした鼓。 そろそろと目を開けてみると。 床に倒れた遼介の上に風呂の蓋が倒れかかっており、さらにその上にシャンプーをかけていた棚や洗面具等が落ちていた。 大惨事である。 「せん、ぱい?」 まさかここまでなるだなんて思ってもみなかったためか、鼓は動揺しながら遼介に近づく。 (!死んでる!!!) 「.........」 (...な訳ないだろ) 「つーくん!」 「ひっ?!」 いきなり起き上がられ鼓は後に飛び退いたが、遼介は鼓に詰め寄り肩を掴みぐわんぐわんと揺らした。 (さすがに怒られるっ) ぐっと鼓は堪えたが。 「つーくん怪我ない?!大丈夫?!」 「え、え、え?」 降ってきたのは意外な言葉だった。 「俺は多少丈夫だからいいけど、つーくんの肌は(やわ)くてふわふわなんだから、怪我したら跡残るんだよ?!こういうことするなら気をつけて!物が落ちてくるなんて想定外だったんでしょ?!ちゃんと考えて!顔に当たったら可愛いのが台無しだよ?!それに石鹸置いてもしつーくんがそれに滑って転んだらどうするの!するならもう少し安全なものを選びなさい!」 叱責するところが、違うと思うのだが。 自分のした事について怒られると思っていた鼓だが、面をくらい、目をぱちくりさせてしまう。 「怪我、してない?」 「だ、大丈夫...ですけど」 「けど?なに?」 「先輩の方が、大丈夫かなって」 「つ......つーくんが、俺の、心配を.........ありがとう、俺は大丈夫だよ」 優しく頭を撫でる。なぜか2人の間に和やかな雰囲気が流れたが。 分かっているだろうか。2人とも裸だということを。

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