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死活問題 5
遼介の爛々とした目を見て、鼓は遼介の言いたいことが分かり身構えた。
「修学旅行ついて行きたい」
(やっぱり)
「ダメに決まってますけど」
「言うと思ったよ!」
「当たり前です」
項垂れる遼介。鼓は諦めてそんなことをしているのだと思っていたが、実は違う。
(今年の修学旅行はカナダか。どうにかして"仕事"としてカナダに行こう。可愛いつーくん1人で海外になんて行かせられない。
どうせなら国内旅行にさせようかな?それだと俺もある程度動ける)
諦めたのではなく、策略を練っているのだ。
この分だと、今年の修学旅行は国内になる可能性は高いだろう。
「可愛い可愛いつーくん」
「っ、いきなりなんですか?ご機嫌取りですか?」
「違うよ」
デレデレする遼介の意図を、その時鼓は読み解けなかったのだった。
そうして時間が経ち、鼓も遼介も出る時間になる。結局時間は8時まで(無理やり)延長され、同時刻に出ることになったのだ。
「先輩携帯鳴りまくってますけど...」
「そうだねぇ。無視していいよ」
「だ、大丈夫ですか?」
「ぜーんぜん大丈夫。それよりもつーくんを愛でることの方が大事」
「ぅ...っ......そうですか」
最初の頃こそ、遼介の恥ずかしい発言に耐えていた鼓だったが。とうとう限界を迎えたらしく、言葉に戸惑い恥じらう。やめてほしいらしい。
「ああ、恥ずかしそうにするつーくん可愛いなぁ。...はぁ......はぁ......」
こういうのも、やめて欲しいようだ。後から、腕 に抱いた鼓に遼介は鼻をぐいぐいと押し付け嗅ぐが、鼓が腕を突っ張って辞めさせた。
「あ、あの...に、匂いを嗅ぐのはちょっと...」
「舐めるのは?」
「もっとだめです!」
「なら嗅ぐのは許して?」
「うううぅん......」
「舐めちゃお」
「だめ!」
「嗅ぐのは?」
「んんんん...」
「いただきま〜す」
「や、や、やっ、やめっ!ほら先輩、もう出る時間なんですから!」
「...チッ......」
(これ程学校と家を恨んだことは無いな...)
遼介は笑みを絶やさないが、そんなことを思っていた。
寮を出ると、黒塗りの車が1台止まっていた。遼介のところの車だとすぐさま気づいた鼓は、じゃあ先輩今度は帰ってきちゃダメですよ?と声をかけてその場を離れる。
「あ、待ってつーくん」
ぐっと腕を引かれて立ち止まると、遼介は鼓の耳に唇を寄せた。
「―隣の席の子と仲良くするのも、程々に...ね?」
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