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対抗抵抗大会 2

鼓くんに軽蔑されたぁぁあ!と走り去っていった詩帆。さすがに悪いことしたかな、と鼓が気にする中。 「気にするな」 「そ、うですか...?」 そう隆盛は鼓をさとした。その言葉の意味は昇降口で分かる。 「隆盛遅い!」 「...ほらな?」 なるほど、本当に傷ついた訳ではなかったようだ。紛らわしい。 「なになに?ふたりとも仲良くなっちゃったのー?俺も入れてー!!」 がばり、詩帆が後ろからふたりの背中に抱きつき、途端青ざめ周りを見渡した。どうやら視線を感じたらしく、遼介が居ないか見ていないか確認しているらしい。 「居るわけないですよ」 鼓は昨日と同様に、笑いながら下駄箱から紙を、校内シューズから押しピンをバラバラと落とし放置した。 先輩ふたりはその様子にまだ少し(おのの)きながらもあえて無視をする。触れない方がいいと思ったのだ。 他愛ない会話をしながら教室まで行くと、やはり昨日と同じで机にゴミや泥が置かれ塗りたくられている。 詩帆と隆盛は思わず顔を、緩めさせた。 おかしな話だが、ふたりとも楽しそうにしているのである。 そうして、鼓は気にする様子もなく机に近づき。 机に貼られた薄い、大きめのテープを引き剥がした。 「「「「?!」」」」 あまりにも薄すぎて見えないそれはラップのようなもので、机の汚れを取るには十分で。 クラス中が驚く中、鼓は今度は机の中を 引き出しのように引き出した。 「「「「?!」」」」 簡単に言うと、机の教科書等を入れる部分が外れたのだ。 「お手入れ完了」 持参の袋にゴミを入れ終えた鼓は、詩帆にィェーィとハイタッチを迫られ、パンッと手を合わせあった。 「作戦成功、です」 「あははははっ。ほんとそれ!」 実は昨日、鼓が異常に疲れていたのにはもう1つ訳がある。それが、これだ。 人目じゃ分からないくらいの薄いテープを詩帆が特注し、机に張る。とは言っても机を横に2往復すれば机が埋まるほどの大きいテープなのだが。 次に机のした部分。これは単に机をひっくり返してネジを外しただけである。 そうして完成したのはからくり机だ。 「ほら、かかっておいでよ。まだまだ得策はあるんだから」 クラス中に向ける笑顔は、まるでいたずらっ子のような顔だった。

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