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鷲野 と 鼓 1
史上最悪の挨拶をしたにも関わらず、騒動の大きかった入学式が終わると、鼓のあまりの美麗さに幾人もの人が鼓の元へ訪れた。
誠実な人にはきちんと、見に来た人には挨拶を、遊びできた奴にはそれなりの対応を鼓はしていった。
たまに、本気で言い寄ってくる人がいれば鼓の「黒さ」を露わにして試したり。
その大半が「イメージと違うね」と言うのだが、それを聞くと鼓は一切の言葉を撥ね付け冷たくあしらうのだった。
その中にも、たまに質が悪いのがいるのも事実である。その1人が、鷲野だった。
「アイツ、全員の告白断ってるみたいだぞ」
「へぇ...女王様気取りかよ。選り取りみどりで困っちゃう〜?って?」
取り巻きの話しを聞きながら、鷲野は鼓に興味を持ち始めていた。入学式でのあの態度、この学校にも綺麗な人間はいるがそれに引けを取らない容姿、そして頭脳。
さらに噂では結構な腹黒さだとも聞いたことがある。
「そいつって、何組?」
「え、鷲野興味あんの?」
「ちらっと挨拶してくるだけだ」
教室で見た鼓は、1人席に座って眠っていた。周りに話しかけるものもおらず、どうやら孤立してしまっているようだ。
しかし、鼓は気づいていないだろうが、すでにこの学校には鼓の「ファンクラブ」が出来ている。影でコソコソ動いているのは、鼓以外の耳にはとどいているのだ。
孤立しているのは本当だが、ファン、もとい、崇拝者のような信者がいるのも確かなのだ。
その分、鼓の態度が気に入らない輩もいるようだが......。
「なぁ、涼川呼んでくれないか?」
近くにいた人に声をかけると、ぴくり、と鼓が動いた。声が聞こえていたようだ。
「涼川、鷲野が呼んでるぞ」
揺り起こされて、鼓は顔を上げた。一応は寝ていたようで目を擦っている。
「...だれ?」
「鷲野。鷲野 末広 。理事長の息子だよ」
「りじちょう......」
「ほら、早く行けって」
背中を押されて、鼓は鷲野のいる扉の前までやってきた。
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