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鷲野 と 鼓 3
「さっきから聞いていれば横暴すぎ。なんなの、最初に会った時の"理事長の息子である俺の命令ドヤァ..."って。ほんとウザかったんだけど。理事長あんなに優しいのに、なんでこんな人の事考えない自己中が産まれたのかな。そっか、優しいから甘やかされて生きていたんだね。このナルシスト。
次、告白の仕方おかしい。「好きなんだけど、付き合ってくれない?」ならまだ分かるけど「付き合え」とか。何言ってんの。好きでも無い奴と付き合えるかっての。あ、でもあんたは付き合えるんだね。すごーい。
さいご、俺は、俺の見た目だけに囚われてる奴って大っ嫌いなんだよね。
じゃ、バイバイ?」
言いたいことを言い終えスッキリした鼓は早々に立ち去ろうとする。
くるりと踵を返す――が、それは不可能だった。鷲野が鼓の肩を掴んだからである。
「ちょっと、待て」
「まだ何か用?」
「何か用、じゃなくてさ。なんだよ今の」
「...?」
鼓は不思議そうに見つめ返した。自分はなにか間違ったことを言っただろうか、と。
実質、鼓は間違っていない為さっさと帰ってもいいのだが。
「なんて、言ったんだ今...。まさか、俺のことを、横暴...ウザイ...ナルシスト...大嫌い......と言ったのか?」
今まで言われたことのなかった鷲野は非常に動揺した。入学した時から誰一人として従わなかったやつなどいないのに、と。
それに対して、鼓は平然と「うん」と言ってのけた。
「...っ!なんだとこのっっ」
胸ぐらを掴まれるも鼓は一切の表情を変えることなく話す。
「図星?怒るってことは、ほかの人にも言われたことあるんだ。普通なら否定するもんね。あ、違う?短気なだけ?」
「黙れ!!」
無表情な顔の、笑みを浮かべぬ口から吐き出される嘲りの数々。
それらに憤りを感じながら鷲野はゆっっ...くり深呼吸をして自分を落ち着かせた。
「.........腹の中が黒いって噂、本当だったんだな」
「それが?」
「もうちょっとお淑やかって感じだと思ってたんだかな」
「...」
「想像と、全然ちげえわ」
―バシッ
鼓は胸ぐらを掴んでいた手を叩き落とした。
「っ」
何するんだ、という言葉は呑み込まれた。酷く冷たい目をした鼓が、そこに立っていたからだ。
「俺に、理想を押し付けないでくれる?」
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