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鷲野 と 鼓 4

「ハッ......」 軽く息づいて鼓から距離を取る。なんだこれは、怖いのか? 突然の激昂。鷲野はギリ...ッと歯ぎしりをし、悔しそうに顔を歪めた。 少しでも鼓の目に怯えた自分に腹が立ったのだ。 だが、それ以上に。 ―こいつを屈服させたい その思いが、鷲野の中で強く芽生え始めていた。 こいつが俺の前で膝を折る姿が見たい。涙を零し、震え―そして許しを乞う姿が。 その姿を見、卑下た笑いを浮かべる自分―。 ぞくり、と鷲野は今までに感じた事のない感情を掘り起こした。 滾る、まさにこの言葉が合っているだろう。 「...ははっ」 急に笑った鷲野に鼓は気持ち悪い、と一言呟いた。だが、鷲野は刺々しいその程度の言葉で苛立つことは無かった。 「なに、笑ってるの?」 「別に...?なぁ涼川 鼓、これから覚悟しろよ。絶対お前を陥落させてみせるからな」 「―っ!誰がお前なんかに!!!」 鼓は大声でそう叫び、二度と近寄るな!と人睨みして教室に帰っていった。 その背中にすら、鷲野は興奮していたとはつゆ知らずに。 次の日から、嫌がらせは始まった。 まず始めは簡単に、クラス中からの無視を指示した。ふい、と躱される視線と今まで話していたクラスメイトからの無視。 少しは打撃を受け弱るかと思いきや、鷲野の読みは外れ、鼓は全く気にすることなく毎日を過ごしていた。 大幅な悪口を流した。周りからの冷たい視線にさすがに耐えきれないだろう、と思っていたがこれも外れ、やはり鼓は気にしなかった。 下駄箱にも細工した。取り巻き達に押しピンや虫やらを入れさせた。が、押しピンを下に落とした鼓のによって逆に鷲野が足を怪我する結果となってしまった。

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