127 / 437

鉄の籠 3

蹴りをかましたいのを耐え、鼓は鷲野に問う。 「ずっと休んでたけど、何かあったの?」 「...」 (無視かよこの野郎...) 鼓と鷲野の険悪な雰囲気にクラスの何人かが飛び出していく。あまりの重苦しさに耐えきれなかったようだ。 「退いてくれない?席、座れない「放課後、俺の部屋まで来い」...は?」 被せて言われた言葉に一瞬呆ける。鞄を床に取り敢えず置きながら、聞き間違えかなと口を開く。 「今部屋に来いって言われたような気がするんだけど」 「ひめみや荘の404な」 「だから、部屋番号教えられても行かないってば」 話を聞かない鷲野。そんな鷲野に鼓は苛立ちと少しの恐怖を感じていた。 この4日間で何があったのか、窶れ、目は落窪んでいる。だが目の奥は異様にぎらついており、普通に見てもそこまで酷くないというのに、じっと見ていると何故だか不安になる。 (...怖い) 1歩後ずさると、いきなり鷲野が立ち上がり腕を掴んできた。 「いっ...」 強く捕まれ、唸る。 「なんで、逃げるんだ?」 「に、逃げるわけじゃ」 ここまで迫られたことの無い鼓は顔を青くし戸惑う。 「放課後、ひめみや荘、404号室」 「行かないって言ってるだろ」 ぐっと力を込めて腕を振りほどこうとする。 (...っこの、馬鹿力!外れない!) 「来なかったら退学させる」 「っ...どうぞ?出来るもんならやってみなよ」 いくら理事長の息子とは言え、理由なく退学させるのは難しい。 それに加え、鼓は理事長のお気に入りなのだ。退学など惜しい思いをわざわざ理事長がするわけが無い。 「じゃあ、隣の席の奴を退学させる」 「.........な、に言って、るの」 その時、鷲野は初めて笑顔を見せた。

ともだちにシェアしよう!