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鉄の籠 3
蹴りをかましたいのを耐え、鼓は鷲野に問う。
「ずっと休んでたけど、何かあったの?」
「...」
(無視かよこの野郎...)
鼓と鷲野の険悪な雰囲気にクラスの何人かが飛び出していく。あまりの重苦しさに耐えきれなかったようだ。
「退いてくれない?席、座れない「放課後、俺の部屋まで来い」...は?」
被せて言われた言葉に一瞬呆ける。鞄を床に取り敢えず置きながら、聞き間違えかなと口を開く。
「今部屋に来いって言われたような気がするんだけど」
「ひめみや荘の404な」
「だから、部屋番号教えられても行かないってば」
話を聞かない鷲野。そんな鷲野に鼓は苛立ちと少しの恐怖を感じていた。
この4日間で何があったのか、窶れ、目は落窪んでいる。だが目の奥は異様にぎらついており、普通に見てもそこまで酷くないというのに、じっと見ていると何故だか不安になる。
(...怖い)
1歩後ずさると、いきなり鷲野が立ち上がり腕を掴んできた。
「いっ...」
強く捕まれ、唸る。
「なんで、逃げるんだ?」
「に、逃げるわけじゃ」
ここまで迫られたことの無い鼓は顔を青くし戸惑う。
「放課後、ひめみや荘、404号室」
「行かないって言ってるだろ」
ぐっと力を込めて腕を振りほどこうとする。
(...っこの、馬鹿力!外れない!)
「来なかったら退学させる」
「っ...どうぞ?出来るもんならやってみなよ」
いくら理事長の息子とは言え、理由なく退学させるのは難しい。
それに加え、鼓は理事長のお気に入りなのだ。退学など惜しい思いをわざわざ理事長がするわけが無い。
「じゃあ、隣の席の奴を退学させる」
「.........な、に言って、るの」
その時、鷲野は初めて笑顔を見せた。
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