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鉄の籠 5
放課後までの間、遼介のメールは復活していた。
『つーくん、心配事ない?』
『大丈夫?なんか困ったことない?』
『あと少しで帰れるから待っててね』
『何かあったら絶対言うんだよ?わかった?言わなかったら怒るから』
『つーくん―...』
(なんかバレてる気がするんだけどなぁ...気のせいかなぁ?)
遼介からの大量の「心配」メール。鼓は気づかれたのではないかと冷や冷やしていた。
特に、遼介の『言わなかったら怒るから』に非常にドギマギしている。鼓は怒られることが嫌いであり、その言葉にも酷く反応しやすい。
それは鼓の幼い頃が関係しているのだが......。
思い出しそうになった記憶を、頭 を振って消し去る。
(どうにかして返信しなきゃ。...でも、俺一人で、もしかしたら解決出来るかもしれないし)
遼介に変に心配して欲しくなく、鼓は葛藤する。
(怒られたくない、でも心配もさせたくない)
(鷲野の部屋に入って、隙を見て逃げ出せばいい。古木もそこにいるはずだし)
(もしくは、古木を解放しないと部屋には入らないって言えばどうにか...)
(でも見つかったら先輩に怒られる)
(いやもう見つかってるかもだけど)
(GPS消しとけば何とか...うん、いける。一回電源落ちちゃってGPSが外れたってことにしよう)
(これで鷲野から古木は救い出せるし、俺も逃げ出せる。先輩にも極秘に動けばバレないし怒られない)
名案(迷案)だ、と鼓は心の中でニンマリし遼介にメールを送った。
『何もないですよ、先輩。困ったことありません。今日先輩が帰ってくると思うとドキドキしてます。気をつけて帰ってきてくださいね』
送信し、僅か数えること3秒。
『そう?ならいいんだけどね。あと、ごめんねつーくん、帰るの少し遅くなりそうなんだ。うるさいのに捕まってね、まるで蠅みたいな小うるささなんだ。叩き潰してからそっちに行くよ』
(3秒、で、これ打ったの?先輩タイピング検定段10級取れそうだよね。あるかどうかは知らないけど、今度調べよう)
やはりどこかズレている鼓だ。
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