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鉄の籠 6

side 遼介 俺は大きくため息をついた。 片方だけ付けているイヤフォンから、鼓とと鷲......なんとかいう奴の会話が聞こえてくる。 『放課後、絶対だからな』 『分かってるから。自分の席に戻ってよ』 鼓は事を荒立てたくないのか、俺に何も言ってくれなかった。 そう、何も。 この5日間で、詩帆と隆盛、八九座からつーくんの行動は全て聞いている。俺自身も盗聴をしていたのだけれど。 とにかく、つーくんは俺を信用していない。つーくん自身はそうは思ってないらしいけど、傍から見ればそれは信用に値しない関係としか見れないだろう。 詩帆にも言われた。『鼓くん、遼介に心配かけたくない、俺みたいなのが邪魔しちゃいけないって言ってたよ?どういうこと?』と。 そんなの、俺が聞きたい。鼓は俺のことを信用し、好きだと言ってくれていたはずだ。 なのに自分を卑下するような発言をするなんて、正直自分が恋人として思っていないような感じなのだ。 『遼介はちゃんと好きって、愛してるって言ってるよね?』 『言ってる、もちろん』 『しつこそう......。鼓くんにはそれ届いてないよね。なんでだろう。 遼介と付き合っても、心配してもらうなんて恐れ多い...って感じ?それとも。 鼓くん、昔何かあったの?』 『...』 詩帆に言われたこと、それは俺も前々から思っていたことだった。 鼓は異常に愛を求める傾向にある。鼓がたまに俺を試すことをするのも知っている。 この間の『俺が、いままで遊んできた人達を―殺してって言ったら?』なんて、いい例だ。 鼓のためならそんなこと意図も簡単に出来る。 その他にも、鼓は時折俺が居るはずなのに寂しそうな目をこちらに向けてくるのだ。 どこを向いているのか、分からない遠い目で。声をかければそれはふっ...と消えるのだが、それが気がかりで仕方がなかった。 『ねぇ、鼓くんの過去ってもう調べたの?』 『...ああ』 実は、もう調べていたりする。正確には、調の方が正しいのだが。 調査の結果は―何も無かった。 何も無かった、それだけで済むなら良かったというのに、鼓の調査結果は異常だった。 鼓が生まれ、2年がたった頃からだろうか、その頃からの記録が一切ないのだ。

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