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鉄の籠 7
いくら探させてもそれは一緒で。
2歳になった鼓のそれからの経歴はどこにも書かれていないのだ。
恐ろしいことに、それは13歳まで続いている。鼓の経歴は産まれ、2歳になった頃と13歳から今に至るまでしかない。
この空白の11年の間に、一体何があったというのか。
そして既に探させた何人かは行方不明になっている。
本人に聞けるような話でもないため、お手上げ状態だ。
今回のことでよく分かったのは、鼓は自分を蔑ろにしてしまうということだ。
鼓の中で、どんなに俺が信用されてようとも、信用と自棄とはまた別物だ。
鷲野との件も、自分なら大丈夫だろう、少しくらい自分が傷ついてもいい。そんな気持ちから来ているのだろう。
「...つーくん」
ずっと部屋に閉じ込めて、愛を囁き続ければ鼓の不安は消えてくれるだろうか。自棄は無くなるだろうか。心配そうな、不安そうな顔はしなくなるだろうか。
答えは、否、だ。
そんなことをしても意味が無いのは分かっている。
でも、今回のことは、少しばかり...
「ちゃんと頼らない悪い子には、お仕置きだね」
side 鼓 (三人称視点)
授業中、鼓は妙な寒気に襲われ体を震わせた。
(...風邪?それとも鷲野のせい?)
先程からじっ...と授業中も休み時間も、鷲野は鼓のことをねっとりとした視線で見ていた。
担任に無理言って鼓の斜め後ろの席に移動し、見つめる鷲野。
(キモイキモイキモイキモイ!なんなのさっきから!授業集中しろよ██野郎!)
苛立ちのせいか、シャープペンシルの芯が次々とパキ...と折られていく。もうこれで12回目だ。そろそろ中の芯も無くなる頃合だろう。
「はぁ...」
ため息をつけば鷲野の下劣な笑みが伝わってくる。
それが気持ち悪く、また芯をパキン...と折ってしまう。
(...一発殴っても、いいかな)
物騒な考えを持て余し、鼓は歯軋りをした。
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