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鉄の籠 8

放課後― 「鼓くん、かーえろ?」 教室に来た詩帆と隆盛教室の空気が重いことに気づく。 「ん?」 「あ、先輩。すみません、今日日直なんで少し待ってもらえますか?」 「いいけど...なんでここ、こんなに空気が重いの?」 「あー...」 ちらりと鼓の視線が向いた先には、鷲野がじっとこちらを見ている姿がある。それを見た志帆はぎょっとし、鼓を一旦教室の外に連れ出した。 「ちょ、ちょっと鼓くん!あれ、あ、あ、あれ!」 「先輩声でかいですよ」 「そんなこと言ってられないでしょ!あれって嫌がらせの主犯格でしょ?!」 「そうですね」 「本人に自分が危険という自覚が無さすぎる...」 額を押さえ、詩帆はわざとらしくふらついた。 「大丈夫なのあいつがいて!」 「別にどうもないですよ」 (本当はあるけど、言ったら絶対鷲野の所になんて行かせてもらえないだろうな) 息をするように嘘をついた鼓。その嘘は長年に渡って培われてきたものである。 詩帆も気づくことなく、なら良いんだけど...と返した。 だが、隆盛はそんな2人をじっと見、どうするべきか迷っていた。遼介に、鼓の違和感を言うべきか言わざるべきか。 そう考えていたのだが、もう知っている可能性の方が高いだろう、とこのことに目を瞑った。 「涼川くん、すまないが今日は一緒に帰れない。志帆もちょっとした都合があって」 「あ、分かりました。じゃあ日直が終わり次第帰りますね」 何もないよと言いかけた詩帆は、隆盛の顔を見て察し、同意した。 「ごめんね鼓くん!」 「いえ、それじゃあ、1週間ありがとうございました」 礼儀正しくお辞儀をし鼓は2人を見送った。 「隆盛、なんでさっきあんなこと言ったの?」 「少し、確かめたいことがあって」 「?ふぅん」 廊下を歩いていると、隆盛の携帯が鳴る。見ると、隆盛の踏んだ通り遼介だった。 『何勝手につーくんの護衛辞めてるの。最後までちゃんと果たしてよ』 「やっぱり、盗聴器を付けていたか。だったら俺が離れた意味、分かるな?」 『......つーくんの会話は全部聞いてるから安心してよ』 「ならいい」 事務的な会話で終わらせ、それを見ていた詩帆は不満そうにその電話を見ていた。 「どういうこと?」 「後で話す」

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