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鉄の籠 10

引き摺られている最中に携帯の電源は消され、鞄も教室に置かれたままであり、鼓は今完全に遼介との連絡を絶ったことになる。 ひめみや荘404に着くと、鷲野はカードキーを取り出した。 かぐら荘は鍵式だが、ひめみや荘やみやび荘ともなると下手な扱いは出来ない、とキーカード式なのである。 ちなみに、みやび荘はキーカードに加え指紋認証もある。 部屋に入り、鼓が目にしたのは物が散乱した廊下だ。 (悲惨。ってかなんか...く、臭い?) どんな生活をしていたらこうなるのか、洗濯物は回されておらず放置され、どことなく悪臭が漂っている。 口と鼻を覆いながら長い廊下進み、リビングへ入る。 「!」 悪臭の原因は、ここだった。 ゴミ袋が山積みにされ、入り切らなかったのか周りにもゴミが散らばっている。元は綺麗だったであろうアイランドキッチンは、今や無残に食器が置かれ黒ずんでいた。 冷蔵庫は開きっぱなしにされ、中から何か腐ったものが飛び出ている。 嘔吐(えず)きそうになる程の異臭で鼓は思わず涙目になる。 「...は、すず...涼川?」 声が聞こえた方向に首を向けると、そこに古木がいた。縄で縛られゴミの中に沈められている。 鼓は駆け寄った。 「大丈夫?!」 「大丈夫...だけど。お前こそ、大丈夫なのか?アイツに無理矢理連れてこられたんじゃ」 「それより、なにもされてない?」 「ああ...昨日帰り際に誰かに殴られて、気づいたらもう既にここに居たんだ」 (殴ったのは鷲野か、取り巻きか...) 古木の額には痛々しい血の跡が付いており、固いもので殴られたのは確かだ。 「俺が部屋に来たし、古木は関係ないだろ。解放して」 「...わかった」 意外と大人しく条件を飲んだな、と鼓は少し訝しげに思った。

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