134 / 440
鉄の籠 10
引き摺られている最中に携帯の電源は消され、鞄も教室に置かれたままであり、鼓は今完全に遼介との連絡を絶ったことになる。
ひめみや荘404に着くと、鷲野はカードキーを取り出した。
かぐら荘は鍵式だが、ひめみや荘やみやび荘ともなると下手な扱いは出来ない、とキーカード式なのである。
ちなみに、みやび荘はキーカードに加え指紋認証もある。
部屋に入り、鼓が目にしたのは物が散乱した廊下だ。
(悲惨。ってかなんか...く、臭い?)
どんな生活をしていたらこうなるのか、洗濯物は回されておらず放置され、どことなく悪臭が漂っている。
口と鼻を覆いながら長い廊下進み、リビングへ入る。
「!」
悪臭の原因は、ここだった。
ゴミ袋が山積みにされ、入り切らなかったのか周りにもゴミが散らばっている。元は綺麗だったであろうアイランドキッチンは、今や無残に食器が置かれ黒ずんでいた。
冷蔵庫は開きっぱなしにされ、中から何か腐ったものが飛び出ている。
嘔吐 きそうになる程の異臭で鼓は思わず涙目になる。
「...は、すず...涼川?」
声が聞こえた方向に首を向けると、そこに古木がいた。縄で縛られゴミの中に沈められている。
鼓は駆け寄った。
「大丈夫?!」
「大丈夫...だけど。お前こそ、大丈夫なのか?アイツに無理矢理連れてこられたんじゃ」
「それより、なにもされてない?」
「ああ...昨日帰り際に誰かに殴られて、気づいたらもう既にここに居たんだ」
(殴ったのは鷲野か、取り巻きか...)
古木の額には痛々しい血の跡が付いており、固いもので殴られたのは確かだ。
「俺が部屋に来たし、古木は関係ないだろ。解放して」
「...わかった」
意外と大人しく条件を飲んだな、と鼓は少し訝しげに思った。
ともだちにシェアしよう!