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鉄の籠 12

side 遼介 もっと飛ばせないのか、と何度八九座を叱責したことか。それでも通っている学校までは遠く、これほどまでに家に帰ることを恨んだことは無い。 相も変わらずGPSはつかないし、盗聴器からも何も聞こえない。 ギリ...と携帯を持つ手に力が込められた。 学校に着くと、詩帆と隆盛が寮の方から駆け寄ってきた。 「遼介!鼓くんが!」 話を聞いたらしい詩帆は慌てふためき酷く動揺している。 「分かってる。鼓はもう鷲野の部屋にいるはずだから」 「っ、ご、ごめん、おれ、俺らが見てなかったからっ」 「いい、別に。八九座に責任はある」 詩帆も隆盛も、今更責めたところで意味はない。それは、八九座についてもなのだが、どうしても誰かに当たらないと済まない。 「申し訳ありません」 「謝ってる暇はない、さっさと行くぞ」 「はい」 一歩踏み出すと、八九座と、後の2人が着いてこようとしているのに気づいた。 振り返ると、普段なんてことの無い顔をしている隆盛までが、表情こそ変わらないものの、心配している気が滲み出てきている。 鼓に色々と絆されたのかもしれない。 「ついて行っていい?」 詩帆までもが顔色を悪くし、このまま待たせていても不安で潰れる可能性もあるなと考え頷いた。 「部屋はどこか分かってるの?」 「ひめみやの404」 「...それってさ、どこ情報?」 詩帆がふと聞いてきたが、微笑を浮かべて誤魔化しておいた。 「え、れべーたー、壊れてるって...なんだよ、もうっ」 いざひめみやに着くと、2台ともエレベーターは壊れて点検中であった。 運が悪いことこの上ない。 舌打ちをし、髪をかきあげた。猿たちのパーティーのためにセットされた髪が鬱陶しい。 この髪は、鼓のためじゃない。だから簡単に崩せる。 ついでにスーツの上着も脱ぎ八九座に放り投げた。 「階段だ、走るぞ」 非常階段の戸を開け微かな明かりの中を駆け登る。 鼓が無事にいることを願って、無心で登り続けた。 4階に着いた時には後ろの3人は着いてきていなかった。 そんなことにも気づかず、廊下を走り、404号室に辿り着いた。 鈍色のドアは付け替えられたものなのか新しく、忌々しいことこの上ない。 一応ノブに手をかけたが、もちろん開かなかった。 「...クソが」 3歩ほど下がって、ドアを睨みつける。 「遼介!ドア開いてこ―」 後ろから追いかけてきた詩帆の声と 俺がドアを蹴破る音が重なった。

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