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鉄の籠 13

破られるはずのない鉄製のドアは、今や見るも無残に玄関に横たわっている。 常人には到底できないと思われるそれを見て、一同は驚愕し固まった。 が、それも一瞬のことである。 「...殺す」 部屋の汚さを見て、遼介が一言そう呟いたからだ。 "鼓が、下劣な奴の部屋に入れられて穢れてしまうのが気に入らない" そう言っていた通り、遼介は鼓が穢されてしまったと酷く憤っているのだ。 このままだと何をしでかすか分からない、と全員が冷や汗をかき始める。 土足のまま部屋に入り込んだ遼介の後を足早に追いかけた。 途端、リビングの方から耳を聾するような音が鳴り響いた。 誰かが床に倒されたような、そのようなものである。 それは鼓か、それとも。 「っ、鼓!」 奥歯を噛み締め走り出した遼介は、リビングのドアに手を掛け思いっきり引いた。 ドアはいとも簡単に開き4人にその光景を淡々と見せつける。 そこで目にしたのは。 「あ、あれ?先輩?」 襲おうとした所を躱され、背負い投げで吹き飛ばされた後腕を捻り上げられた"鷲野"と、鷲野の腕をギリギリと締め上げる"鼓"だった。 「...は?」 「せ、せせ、先輩おかえりなさい...えっと!あの!これにはふかーい訳がありましてですね!」 怒られると思ったのか言い訳を始める鼓に、とりあえず...と遼介は鷲野の顔を蹴飛ばしておいた。 「グギャッ...」 それは遡ること数十分前―... 鼓が強制的に古木から引き剥がされた後の話である。

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