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鉄の籠 14
折角縄を解いたというのに鷲野は古木の口にガムテープを貼ったのだった。
次にグイと鼓の手を引いた。
「いたっ!待てって、古木は?!」
「...」
(なんで無視?!聞こえてんだろ反応しろよ!)
リビングの中央まで連れてこられ、嫌な予感がし鷲野を睨みつけた。
「古木を、部屋に返してくれるんじゃないの」
「...そんなことも言ったな」
(ああそう。最初から言うこと聞く気なんてなかったんだ?一瞬でも信じた自分が馬鹿みたいだ)
鼓は腹を括った振りをして中央にドスンと座った。大人しくなった鼓に気を良くしたらしく不気味に笑う。
自ら横になるとその上を鷲野が伸し掛る。
その脇で古木が呻く声が聞こえ―
そして鼓は足を振り上げまたもや股間を蹴りあげた。
声にならない悲鳴を上げながら床を転がり回る鷲野。
何の戸惑いもない動きだった、と後に目撃者の古木は語る。男だからこそ分かる痛みのはずだが、躊躇すらしなかった......と。
「...」
鼓は起き上がり肩に着いたゴミをパッパッと払う。鷲野はその間も悶絶し呻いている。
その姿を見て、ほくそ笑む人が1人。
「あのさ。俺にだけ攻撃するならいいけど、俺の周りの人にするのはやめてくれない?」
「っ...」
「何がそんなに気に入らないのか知らないけど...今度やったら玉潰すから」
「っ...」
ここで鷲野は決定的な間違いをしていることに気づいた。
鼓は、こうして鷲野が部屋に閉じ込めたのは「自分のことが嫌いだから」と思っているのだ。
「好意を持っているから」などとは到底思ってないのである。
「ぐ...っ...くっ...そぉぉぉおおお!」
鷲野は鼓に飛びかかったが簡単に躱されてしまい、逆に腕を引かれそのまま勢いよく背負い投げで飛ばされ腕を捻りあげられてしまったのだった。
そこに遼介達が入ってきた、という訳である。
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