139 / 437

制裁 1

それまでのことを話すと、八九座以外の全員が深く深く、ため息をついた。 鼓がビャッと肩をはね上げる。 「つーくん...」 「は、はい!」 「お説教は帰ってからね?」 後ろからゴゴゴゴゴゴ...という効果音でも聞こえてきそうな程なのに、遼介は笑顔を貼り付けていた。 (そ、そっちの方が怖いぃっ) 死刑宣告を間近に受けた鼓の後ろで、完璧に除け者にされていた古木が音を立てて身動ぎをした。 全員がそっちの方に目を向ける。 「ご、ごめん古木。忘れてた」 「正直かよ。別に大丈夫だ、それよりお前こそ大丈夫なのか?背負い投げした時、軽く足捻っただろ」 「っ、そ、それ言っちゃダメなやつ...!」 「あ、悪い」 2人の会話をじっと見守る遼介。それには少し驚きが含まれていた。 ただ囚われの姫、という訳ではなかったらしく、多少頬が赤くなっているということは抵抗したらしい。 それにこっちが気づかなかった鼓の怪我も見抜いている。 ―この事が終わったら引き剥がすつもりだったけど...検討物だね 「つーくん?」 「!」 「足捻ってるんだァ?どういうことかなぁ?怪我はしてませんって聞いたんだけど、なぁ?」 「ごめんなさいすみません大変申し訳ございません!あります、あります、超あります!足痛いです!」 「よろしい」 さっさと謝ればどうにでもなることに気づき心からの誠意を見せる。 詩帆と隆盛は古木の所へ向かい怪我がないかを確認している。頬が赤いのはやはり殴られた跡ようで、他には手足に縛られた痕跡があるくらいだ。 「塗り薬塗ったら大丈夫そうだね」 「すみません、ありがとうございます。 あの、氷川先輩と話がしたいんですけど」 「俺?」 遼介は自分を指さし首を傾げる。こくり、と頷く古木に近寄ると、古木は遼介に頭を下げた。 「今回の件、すみませんでした。俺がもっとちゃんとしてれば涼川を巻き込まずに済んだ筈なんですけど」 その古木の発言を聞いていた鼓が抗議する。 「それは違う!悪いのは鷲野だ!俺のことが気に入らないからってこんなことしたアイツが悪―」 「ごめんねつーくん。ちょっと静かにしてようか」 「っ、でも」 「そうだね、悪いのは鷲......鷲...鷲鷹だもんね。でもね、古木くん?だっけ。つーくんの言う通り君のせいでもない部分もあるんだよ」 (鷲鷹って、誰ですか先輩。鷲野ですよ) 雰囲気的に言うことが出来ず鼓は黙ってしまった。

ともだちにシェアしよう!