141 / 437

制裁 3

「つーくん帰ろう」 「は、...はい」 一瞬、弱々しい声を出された鼓は、戸惑った。そして大人しくなり、遼介に手を引かれ鷲野の部屋を退出することにした。 「先輩、あの、あいつは?」 「放っておいていいよ。つーくんが気にすることじゃない」 「...はい」 (...え、てかなんでドア壊されてんの?人が蹴ったような後もあるけど。靴の跡着いてるけど、まさか...ね?まさかだよね先輩) 鼓にとってはいつもの、遼介にとっては久しぶりの部屋に帰ってくる。 途端、遼介は鼓に跪き靴を脱がし始めた。 驚いた鼓はうわっ、と驚きの声を上げ玄関に尻もちをついた。 「えっと、先輩?」 「...」 「先輩?!」 靴を脱がし終えると、今度は所謂"お姫様抱っこ"をした。 その間も遼介は無言であり、鼓はそろそろ怖くなってきていた。 (怒ってるよね、超怒ってるよね...とてつもなくもんね) 鼓は分かっていない。遼介が怒っているのではなく、心配で仕方がなかったということを。 そっと降ろされたのはリビングのソファーで。と、思ったのにまた抱き抱えられ座った遼介の膝の上に降ろされてしまう。 「...せん、ぱい」 「つーくん、今から俺の話聞いてくれる?」 「はい」 真摯な目に見つめられ気づけばそう答えていた。 「俺はね、つーくん。つーくんが俺無しじゃ生きられないようにしたいんだ」 いきなりそう言い始められ驚く。 (俺無しじゃ...生きられないように?) 「例えば...俺が選んだ服を着て」 服に手が伸ばされる。 「...俺が選んだ髪型にして...」 髪がさらりと触れられる。 「それから...俺が選んだ食べ物を調理して食べて」 みぞおち辺りに指が来る。 「俺が選んだ香水をつけて...」 首元に指が絡められる。 「俺が選んだ部屋に住んで...俺が選んだ家具を置いて、俺が選んだ友達としか連絡を取れないようにして...その友達との関係も俺が管理して...。あと、俺と永遠に生き続けて......」 ゆっくり、抱きしめられる。 「そうして、つーくんが俺色に染まればいいと思っているんだ」 見上げた遼介の顔は恍惚としていている。自身が鼓に言ったことを頭の中で思い浮かべているようだ。 「どこにでも連れてってあげるし、欲しいものはなんだって買い与えてあげる。 つーくんの為あらば、人だって殺せるし、犯すことも切り刻むことも出来る。 寂しいって言うならずっと傍にいてあげる、要らないって言うなら離れるよ、死ねって言うならもちろんそうする。 気に入らないことがあればなんだって聞くし相談に乗る。 痛めつけてほしいなら、心苦しくはあるけど言うこと聞いてあげるよ。 つーくん愛してる、ねぇ、つーくん、俺はつーくん以外何も要らないんだ。 本当なんだよ、信じて、お願い.........」 言い終えた遼介は鼓の肩にもたれ掛かった切り、何も言わなくなってしまった。

ともだちにシェアしよう!