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おはよう「友達」 1

土日の間に遼介が何をしたのかは分からないが、月曜に鼓が学校に行くと鷲野は居なくなり理事長は入れ替わっていた。 つまり、鷲野親子はいなくなっていたのだ。 遼介や詩帆達と共に学校に行けば視線は完璧に無くなり、陰口やヒソヒソとした声も聞こえなくなっている。 さらに言うと、鼓は"古木と一緒に"クラス変更になっていた。 間違えて元のクラスに入った鼓を見てどれだけクラスの人間が慌てふためいたことか。 「なんでクラス変えたんですか、また名前覚え直しですよ...」 そう言ってわざとらしく肩を落とせば、遼介はニコッとして 「つーくん嘘はダメだよ。最初から覚える気なんてないくせに。古木くんの名前だってに言われて初めて知ったんでしょ?」 と言った。ちら、とそっち側を見て鼓は「バレてましたか」と表情を無くして呟いた。 「俺には、ね。他の人にはバレてないんじゃない?」 「そうですか」 「だいたい、つーくんの頭で「覚えてない」なんてありえないでしょ?まぁ、「覚えても価値がない」は有り得るけど」 「.........先輩は、俺の黒いところを見ても幻滅しないんですね」 鼓は不思議そうに右隣にいる恋人を見上げた。今まで黒い部分を見ると大抵が逃げ出したせいか、鼓はそういう所に敏感である。 「する訳ないよ。好きになった子がどんな性格だろうと、俺は愛するよ。もちろん......つーくん限定だけどね」 鼓を教室の前まで送り届け、遼介は軽く頬にキスをした。 さっきの言葉だけで既に許容量をオーバーしていた頭は簡単に爆発し、顔は茹でダコのようになる。 「ひっ、人前で!キスは!やめて下さいって!言ってる!のに!」 人単語ずつ区切りながら遼介の肩を何度も殴る。 「あ〜、そうだっけかなぁ?」 「〜〜〜!先輩!」 「可愛いなぁつーくん。あ、今日の下着何色?型は?」 「サラッと変態発言しないで下さいよ!黒のボクサーです!」 「答えてくれる辺り優しいよね。次はブリーフお願いします」 「嫌ですっ、さっさと教室行ってください!!!」 「あはは、はいはい」 そんな光景を、古木が後ろからじっと見つめていたことを鼓は知らない。

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