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おはよう「友達」 2
鼓と遼介の「いちゃつき」を何も言わずジィッ...と見つめていた古木。
鼓がため息をつき、だがそれでも嬉しそうにしている姿をきっちり見納めた後、何事も無かったかのように声をかけた。
「おはよう、涼川」
「あ...おはよう古木」
少し鼓は視線を逸らした。
昨日のこともあり、気まずいのである。それに気づいた古木はゆったりと首を振った。
「涼川。俺は別に気にしてない」
「でも、」
「そうだな......そうやって気にするなら、今日の昼飯奢ってくれ。それでチャラ、な?」
「そ、そんなんでいいの?」
「ああ。一番高いのを頼むから覚悟しろよ」
「わ、かった...」
鼓はそれ以上深く言わなかった。古木が気にしないようにわざと軽く接してくれていることが分かったからだ。
「あ、ごめん。俺の財布は先輩が持ってるから、昼飯の時先輩の所に行ってくる」
「え?氷川先輩=財布じゃないのか?」
「は?」
クラス変更になった2人に話しかける者は誰もいなかった。と言うより、そのような勇気は誰一人として持ち合わせていなかった。
皆、鷲野親子が"消えた"という話はもちろんのこと知っているため、下手に鼓や古木に話しかければ親子同様消されると思っているらしい。
姫に隷属を誓う騎士 と、その姫に唯一近づくことを許された歩兵 とー...
「俺は静かでいいけど、古木はいいの?前のクラスに友達とか...」
「いない。お前と一緒に途中からハブられてた」
「......ごめん」
「いや寧ろ有難かった。変に媚びを売ろうとする輩もいたから」
そう、とだけ鼓は呟いて、次に笑った。
「古木。さっきここ教えたよね、公式。y=ax+by+cだって」
「..................」
「こっち、向こうか」
「.........ハイ」
鼓も古木に少しずつだが心を開き、黒い部分を小出しするようになっていた。
昼休みになった途端、教室に飛び込んできた遼介は、つーくん寂しかったよぉおおお!と叫び周りの驚愕させた。
それもそのはず、この学校内で「生徒会長はかっこよく秀才でいらっしゃる」と思われているのだから。その本人がこれでは......。
そうして思いっきり遼介の全身タックルを受けそうになった鼓は華麗によけたのである。
「グァッ」
「先輩、俺の財布貸してください」
「イタタ...どうしたの?俺が財布なのに」
「そんな訳ないでしょ」
やっぱ財布だったんだ、と古木はそう思ったのだった。
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