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生徒会長の特権 1
[体育祭編]
鼓と古木のクラス、2年4組は賑わっていた。
6月下旬、梅雨のせいで湿気が酷くなる頃。夢ノ内高校では、体育祭が行われるからだ。
体育祭はドーム状の巨大な建物で行われる。
競技は一般的な学校と変わらず、リレーや玉入れ、綱引きなど。男子校ということあってか、迫力がありかなり盛り上がるのだ。
「涼川は何する?」
競技決めの最中だというのに、鼓は窓の外のグラウンドをじっと見つめていた。そこには既に競技を決め終え、練習を始めている3年生の姿があった。
もちろん、遼介の姿も。
「.........俺は、なんでも」
話しかけられるも、鼓はうわの空で適当に返事をする。何の話をしているのかさえ分かっていない。
「じゃあ、リレーでいいか」
「うん、なんでm......は?」
はっとして古木を見上げる。古木は教壇に立って板書している体育委員に向かって、涼川がリレーをしてくれると言った。
体育委員は嬉しそうに頬を弛める。
「涼川ありがとう、リレーだけ決まらなくてさ!」
「涼川足速いもんな〜」
「これで安泰じゃん」
「ちょ、古木?!ってか待っ......」
止めようとするが、名前は800メートルリレーの下に刻まれてしまう。鼓は非難の目を古木に向けた。
古木は気にした様子もなく肩をくすめるだけ。
「リレーなんて、嫌なんだけど」
「でももう決まったことだろ、話を聞いてなかったのが悪い。それにしても、どうしたんだ?お前がぼーっとするだなんて」
「別に?ぼーっとしてなんか」
「............グラウンド?」
鼓の顔が引き攣る。
前のクラスでは、鼓の席は窓側で、とは言っても裏庭が見える方の窓側だった。
だがクラスが変わると、場所も代わり、グラウンドの見える窓側になったのだ。
そのおかげで、鼓は遼介が体育の授業の時は毎時間見ることが出来るようになってしまい......結果、ぼーっとしてしまう訳だが。
「違う」
鼓はそれがバレたくないのか平然とした顔をしてそう言い放つ。
「すぐ否定するのは怪しいぞ」
「違う、グラウンドなんて見てない」
「俺は「見てる」なんて一言も言ってないぞ」
「うっ...」
ガクン...と鼓は項垂れ、無駄な抵抗に終わったことを察した。
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