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生徒会長の特権 4
次の日、1時間目が練習だったため、鼓と古木は着替えてからグラウンドに足を運んだ。
この高校、校舎や寮も然 る事乍 ら、グラウンドも大きい。
そのためいくつかのクラスが同時に練習を行うことが出来るのだ。
そう、それはクラスや、もちろん学年も関係ない。
「涼川、顔死んでる」
「........なんのこと、古木」
「いやなんでもない。触らぬ神に祟りなし、だ。俺は知らん」
たまたま遼介たちのクラス(遼介、詩帆、隆盛は3-7)と練習時間が被ったのだが、それがいけなかった。
寮では"あんな"遼介でも、学校では"生徒会長"の皮をかぶっているのだ。
「氷川先輩、モテてんな」
「...」
「っ!涼川、痛いっ、痛いって!足首を的確に捻りあげるのやめろっ」
そう、モテるのだ。
「氷川先輩かっこいい〜〜〜!」
「頑張って〜〜!」
「生徒会長〜〜!」
男子校のはずなのに、黄色い歓声。思わず耳を塞ぎたくなる音量である。
遼介たち3年には騎馬戦があり、遼介はそれの大将なのだ。
強い相手が来ようと、平然と薙ぎ倒すその姿に皆揃って叫び声を上げる。中にはうっとりと見つめる者もいたり。
「...今日の夜ご飯、抜き」
「やめろこら。氷川先輩には非はないだろ」
「古木............目に砂掛けていい?」
「理不尽だなおい!」
羨望と慕情と。それらを向けられているはずだが、遼介は諸共せず敵を一掃する。
鼓も観戦していたが、あまり見たくもなく下の砂をいじっている。
(かっこいい......でも、複雑っていうか......こんなに慕ってくれる人は沢山いるのに、なんで俺を選んだの?)
鼓は確かに綺麗ではある。が、性格には難があるし、可愛くはない。
どうして自分が選ばれたのか、鼓は未だに理解出来ていなかった。
「おい涼川?」
「!なに?」
「なに、じゃねぇよ。氷川先輩騎馬の練習終わったみたいだぞ」
「え、だから?」
「は?だから?...はぁぁぁぁ〜、鈍いな」
「なに?」
「タオル持って行ってやるのが彼氏の務めだろ。ついでに牽制してこい!」
「え、え、え?」
訳が分からぬままにタオルを持たされ、背を押され、遼介のいる輪に押し込まれた。
(古木酷すぎる。後で覚えてろあの馬鹿)
一度入ると出ることも向かうことも出来ず鼓はもみくちゃにされ、ドンと誰かに押され大きく転んでしまった。
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