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生徒会長の特権 5
転んだ先に、砂で汚れたグラウンドシューズ。
「つーくん?」
「!」
声を掛けられ顔を上げると、驚いた顔の遼介が立っていた。つい先程まで練習していたせいか、汗が滴り如何にも暑そうである。
「大丈夫?怪我してない?」
「大丈夫、です」
転けてしまったこと(結果としては押されただけ)に赤くなりつつ、鼓は抱えていたタオルを差し出した。
「あの、タオル―...」
「ああ、ありがとう。つーくんは優しいね」
遼介は受け取り、汗を拭く。それから、鼓は遼介に手をさしのべられ立ち上がった。
そして、ついでに抱き締められてしまった。
「?!」
ヒュッと鼓が息を飲む。
「んー、つーくんいい子いい子」
「ちょっ、離しっ」
「汗臭い?」
「そ、そうじゃな、ありませんけど!むしろ花の匂いです!」
「ふふ、つーくん、今日から敬語なしにしよっか」
「無理無理無理、無理です!遼介先輩呼びだけでも許して下さいよ!」
グラウンド真ん中、体育祭の練習中にいちゃつくバカップル。
遼介と鼓は(遼介は分からないが)到底そんなこと思ってもみないが、傍から見ればバカップルだ。
「つーくん俺、かっこよかった?つーくんが見てるの分かって頑張って見たんだけど」
(待っ、て?あの戦火の中で俺の事気づいたの?洞察力どうなってんの?!)
困惑する中鼓は必死に取り繕い、かっこよかったです、と述べた。遼介も笑顔を浮かべて
「そっかそっか。それで?つーくんは俺がチヤホヤされて焼きもち妬いちゃったの?」
爆弾を投下した。
「..................へぁッ?!」
「俺、耳いいんだ!」
それを世間一般では地獄耳と言うのだが...。鼓も頬を引き攣らせどう反応したらいいのか模索しているようである。
「俺はつーくんだけだよ?」
「...わかって、ますよ」
「分かってない。ここでちゃ〜んと証明してあげるから、ね?」
「ま、何を、っ」
身長差で、持ち上げられてしまえば鼓の足は簡単に宙を舞う。つまり、抵抗不可。
鼓は遼介に唇を奪われていた。
(―っ、こ、公開処刑っ)
「やッ......ふっ...」
口腔を動き回る舌、送られる甘い愛液。歯列をなぞり、舌の根元を擽られる。
イヤイヤとその甘い攻撃から逃げようとするが、遼介は鼓の後頭部を引き寄せて阻止した。
「はっ......も、や、め...っ!」
胸元を叩くと、ようやくキスが終わる。離された口と口の間には銀の糸が垂れていた。
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