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忍び寄る不安と迫り来る体育祭 4
ガクンと項垂れる1年。
「知って...ます」
今や鼓と遼介が付き合っているという話は学内全体に行き渡っている。知らないという方がおかしいのだ。
「でも!僕の気持ちを知って欲しくて!」
「うん」
「氷川先輩、大好きですっ」
「ありがとう」
これで終わり。
ここできっちり断り、鼓への愛を気持ちを伝える。そして1年は諦め、鼓は安心して更に愛を増幅させる......遼介はそんな一石二鳥な未来を思い浮かべていたのだが。
「でも俺には、「付き合ってくださいっ」...うん、うん?話聞いてたかな」
終わるはずの話は継続させられた。遼介はあれ?と首を傾げる。
どこで間違えた、と。
「涼川さんと別れてくださいっ」
「はーい、回れ右して今すぐ帰れ」
「酷い?!」
「君がね」
1年は涙目の上目遣いで遼介を見遣るが、遼介は特に心に響いた様子もなくニッコリ笑ってもう一度「帰れ」と言っただけだった。
鼓を貶された遼介は一切容赦がなくなる。
「涼川さんって悪い噂多いですよね!」
「か、え、れ」
「僕と付き合った方がいいですよ!僕顔には自信ありますし素直です!」
「メリットがないね。顔はつーくんの方が可愛いし綺麗。素直なだけの「忠犬」なんて必要ない。帰って」
「〜〜!なんでですかっ。涼川さんは性格悪いって聞きます。それに、先輩が脅されてるとも!」
(いつの話だよそれ......ってかまだまわってるのか)
遼介は頭を抱えた。鼓を疎ましく思う者の犯行だというのは分かるが、それが一体何人になるのかは......。
どうしてこの学校の人達は俺と鼓の邪魔をするのだろうか、と遼介は空を振り仰いだ。
「それに...」
再び1年が上目遣いをする。その目には欲情の色が浮かんでいた。
「僕、結構テクニックあります
......セフレでも、大丈夫ですよ」
ネクタイが解かれ、魅せられる胸元。鼓程ではないが、白い肌は美しく陶器のようである。
頬は程よく赤く色づき、男なら誰でもその色気に当てられるだろう。
「触りますか...?」
首を適度に傾け口から吐息を漏らす。
遼介も、男達と同じようにその首筋当たりに手を伸ばし
ガッと首を絞め上げた。
同時にドアスコープに背をつけ中から見れないようもたれ掛かる。
「―っ」
「笑わせるな」
発せられたのは、人ひとり殺せるほど冷たく尖った声だった。
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