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忍び寄る不安と迫り来る体育祭 7
顔を合わせては話しづらいだろう、と考慮し、後ろから抱き抱えて遼介は話をさせた。
手紙のことを全て話終えると、遼介は鼓の肩に顎を乗せた。
「はぁ...」
鼓がビクッと肩を揺らす。鼓の顔色は悪くいつ怒られるかと怯えているかのようだ。
それを見て遼介は優しく頭を撫で頬にキスをする。
「もう、つーくんは本当に......怒ってないよ、俺は」
「、ごめんなさい...」
「よろしい」
鼓は素直に謝った。
よっこいしょと鼓を抱き抱えたまま立ち上がり、そのまま横抱きにする。鼓は大人しく抱かれ、運ばれていく。
リビングを通り過ぎ遼介の部屋に到着しベッドに座る。
「つーくんは、俺が別れると思ってるの?と言うより、いつかこの関係が終わるって思ってるよね」
「...」
心の中を見透かされれば、鼓は目を逸らし逃げようとする。
「逃げない」
「...」
「............そんな心配性で可愛いつーくんにはこれかな」
鼓をベッドに置いて机の中から高級そうな蒼い箱を取り出した。
その蒼い箱を開けると、金と銀、二重に重ねられた輪が光っている。
「アンクレット、だよ」
鼓の前に跪き下から箱を見せる。まるでプロポーズのようだ。
「足に付けるものなんだ」
「足に...?」
遼介はそれを鼓の足に巻き付けた。動くとシャラ、と音を立てて揺れる。
よく見ると細かに蒼いダイヤが埋め込まれ、金銀の輪の間に細いチェーンがあしらわれていた。
「アンクレットの意味はね。
左足が"恋人がいる・婚約・結婚している"で、右足は"恋人募集中・浮気相手募集中"って意味。
つーくんは右足につけちゃダメだよ?」
鼓は自分の足を見つめたまま動かない。それに魅入られたようにじっとそこから目を離せないでいた。
「あともう1つ。アンクレットには「誰かの所有物である」って意味もあるから。
そして、俺はブレスレットを付ける」
遼介は箱からアンクレットとよく似たブレスレットを取り出し自分の腕に巻き付けた。
「このふたつは対だよ。同じ種類のものを俺が腕につけていたら「つーくんは俺のモノ」って意味になる」
「俺の、モノ」
「どう、安心した?それとも...こんなに束縛されて、コワイ?」
ふるふる、と首をおおきく振り鼓は満面の笑みを浮かべた。
「嬉しい...嬉しいですっ。遼介先輩、ありがとう...!」
「不安は少しは無くなった?」
「はい!大事にします!」
「俺はつーくんと別れるつもりも、離すつもりもない。そこだけは分かってて」
「はいっ...」
ギューっと鼓は遼介に抱きついた。
(つーくんには、これくらい重い愛が丁度いいんだよね)
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