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忍び寄る不安と迫り来る体育祭 8
風呂の間ですら、鼓はアンクレットを外すことはしなかった。
シャラシャラと音を立てて揺れるそれを見ては、にやけ、大切そうに触れていた。
「気に入ったの?」
そうしているのを見られ、気恥しそうに目をそらす。
「気に入ってます。すごく」
「よかった」
細い足首に絡みつくチェーン。まるで鼓にまとわりつく遼介を表しているかのようだ。
実際、今とてストーカーこそしていないもののまとわりついてはいるのだが。
「機嫌が良さそうなつーくんにもう1つプレゼント」
「?」
「ジャジャーン。入部届け〜」
「い、り、ま、せ、ん」
鼓は今度こそあらぬ方向へ向き遼介を視界から外す。
「ほら、そんなこと言わずに、ね?受け取って?」
わざと遼介は足首にに触れ促す。鼓はうぅ...と唸って、入部届けを手にした。
「......もう、...受け取るだけですよ」
「ありがとう」
不満げな鼓だったが、遼介の満足そうな顔を見て何も言えなくなってしまった。
体育祭の準備も順調に、鼓の出る競技もだんだんと練習回数が多くなっていく。
めんどくさいながらも別室で服を着替え、古木の元へ行くと、古木はじっ、と鼓の顔を見て固まっていた。
「古木?」
「ヤンデレ、最高......」
「は?」
鼓は一瞬固まり、思い浮かべ、咄嗟に足元を見た。
体育の授業中や体育祭の練習中には、短めの靴下を履くことがこの学校の決まりである。
鼓は踝 までの短い白靴下を履いていた。
よって、アンクレットが丸見えなのである。
「あ、あ、ああ、これは、俺の趣味で」
「言わなくても分かるから、涼川......。
なんか心配事とか不安なことがあったんだろ?それで先輩がそれを渡してきたんだよな?"つーくんは俺のモノ"って。
それに左足に付けるのは恋人、婚約者がいますって意味......。
遠回しに牽制してる...こいつは俺の所有物だって言ってる......最高」
「ァ、ハイ、ソウデスカ」
思考を放棄、回れ右をし、鼓は古木より先にグラウンドに出ていった。
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