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明日は体育祭なので頑張りません 2

ああ、そうだ。と鼓は何故か微笑む。その笑顔は悪巧みをする子供のような笑顔で...遼介は寒気を覚えた。 「つ、つーくん?」 「先輩、チームの代表でしたよね?」 「...?うん、そうだけど...」 「先輩のチームが優勝した場合、ハグはどうなるんですか?」 「どうなるって、俺からのハグはナシにな―............ま、さか、」 「分かりましたか? 先輩、 俺のために体育祭優勝してください」 一度、部屋が静まり返り。 詩帆が吹き出して、その静寂は幕を閉じた。 「あははっ、鼓くん、冗談キツイよ〜?だって、うちの学校「スポーツ科」がいるんだよ?さすがに遼介でも.........」 誰一人として、主に鼓が笑っていないことにより、詩帆は事の重大さを知る。 「......え、なにこれ、本気?」 この学校には「進学科」「スポーツ科」の大きくわけて2つがある。スポーツ科は体育祭で毎年優勝しており、もちろん去年も堂々1位を勝ち取って行った。 それに勝て、と鼓は言うのだ。 「無理だってば鼓くん!無茶振りにも程があるよ!」 「じゃあ先輩は俺以外を抱くってことですね...残念です」 鼓は俯き、ギュッ...と拳を握りしめる。涙を堪えているように見えるが...さてはて。 その姿を見た遼介は、詩帆に迫りよる。 「ちょ、っと?!遼介!待って?!俺悪くなくない?!」 「つーくんを悲しませた罪は重い」 「ぎゃぃあああああ!!」 志帆を締め上げ、遼介は再び鼓の元へ正座で戻った。 「つーくん......それはつーくんのお願いなのかな?」 「.........」 「つーくんが「オネダリ」してくれるんだったら、俺、優勝出来ると思うけど。ううん、優勝出来るけど?」 鼓は遼介の目を覗き込み、絶対ですか?と問う。 「当たり前。つーくん、とっても可愛く「オネダリ」してね」 (可愛くってどうやってですか、俺、元から可愛げなんてないのに) ムッ...と鼓は考え込み、ンーと唸り、首を傾げ、漸く思いつき口を開いた。 「じゃあ......俺のために頑張って.....りょ...、.......遼介」 鼓曰く。 名前で呼ぶのは精一杯の可愛げ、らしい。 「ぐっ...」 小悪魔だ、と呟きながら遼介は正座のまま倒れて行った。

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