166 / 437
明日は体育祭なので頑張りません 2
ああ、そうだ。と鼓は何故か微笑む。その笑顔は悪巧みをする子供のような笑顔で...遼介は寒気を覚えた。
「つ、つーくん?」
「先輩、チームの代表でしたよね?」
「...?うん、そうだけど...」
「先輩のチームが優勝した場合、ハグはどうなるんですか?」
「どうなるって、俺からのハグはナシにな―............ま、さか、」
「分かりましたか?
先輩、
俺のために体育祭優勝してください」
一度、部屋が静まり返り。
詩帆が吹き出して、その静寂は幕を閉じた。
「あははっ、鼓くん、冗談キツイよ〜?だって、うちの学校「スポーツ科」がいるんだよ?さすがに遼介でも.........」
誰一人として、主に鼓が笑っていないことにより、詩帆は事の重大さを知る。
「......え、なにこれ、本気?」
この学校には「進学科」「スポーツ科」の大きくわけて2つがある。スポーツ科は体育祭で毎年優勝しており、もちろん去年も堂々1位を勝ち取って行った。
それに勝て、と鼓は言うのだ。
「無理だってば鼓くん!無茶振りにも程があるよ!」
「じゃあ先輩は俺以外を抱くってことですね...残念です」
鼓は俯き、ギュッ...と拳を握りしめる。涙を堪えているように見えるが...さてはて。
その悲愴な姿を見た遼介は、詩帆に迫りよる。
「ちょ、っと?!遼介!待って?!俺悪くなくない?!」
「つーくんを悲しませた罪は重い」
「ぎゃぃあああああ!!」
志帆を締め上げ、遼介は再び鼓の元へ正座で戻った。
「つーくん......それはつーくんのお願いなのかな?」
「.........」
「つーくんが「オネダリ」してくれるんだったら、俺、優勝出来ると思うけど。ううん、優勝出来るけど?」
鼓は遼介の目を覗き込み、絶対ですか?と問う。
「当たり前。つーくん、とっても可愛く「オネダリ」してね」
(可愛くってどうやってですか、俺、元から可愛げなんてないのに)
ムッ...と鼓は考え込み、ンーと唸り、首を傾げ、漸く思いつき口を開いた。
「じゃあ......俺のために頑張って.....りょ...、.......遼介」
鼓曰く。
名前で呼ぶのは精一杯の可愛げ、らしい。
「ぐっ...」
小悪魔だ、と呟きながら遼介は正座のまま倒れて行った。
ともだちにシェアしよう!