169 / 440
夢ノ内高校体育祭 開催 1
『みなさん、おはようございます。え〜、今日は綺麗な快晴、ということで。梅雨の時期だと言うのに、え〜誠に喜ばしいことであり、あ〜、みなさんの日頃の行いが良いからであり、え〜、あー―......』
(長いしうるさい、この能無し校長。挨拶する以外は校長室でエロ本読んでるの知ってるんだからさっさと終わらせろよ。
あと。室内体育祭なんだから天候関係ねえよ)
と、大声で叫びたいのを堪える。
鼓は今、非常に不機嫌な状態で二階の生徒用観覧席で待機していた。
理由は、学校へ向かう途中突然呼び止められ「代表挨拶をして欲しい」もなんの前触れもなく言われたからだ。
もちろん断る鼓。だが教員は続けて「成績を上げてやるから」と堂々と言う。
「......ヘェ」
ゾッとするような怒気に驚いたのは教員だけではなかった。横にいた遼介も少し目を見開いたのである。
普段、辛辣なことを言いながらも鼓が本気で怒ることはなかった。だと言うのに、教員の言葉に鼓は怒りを顕にし、教員を睨みつけている。
ここまで怒る程に、何故鼓は権力を嫌うのか......
鼓を怒らせてしまったことで、遼介が何か自分にしてくるのではないか、と教員は易々と引き下がった。
それで鼓は不機嫌なのである。
(イライラする。あんなのがいるから馬鹿もエレベーター式で登ってくるんだよ。生徒も生徒なら先生も先生、所詮蛙の子は蛙だな)
氷 が降るのではないかと思わせる程、無表情である鼓の周りは底冷えしていた。
だが。誰も近寄れぬその雰囲気に足を踏み入れるものが3名。
「何イライラしてんの?」
「鼓くん空気が冷たいよ〜?死にそうなんだけど」
「詩帆は図太いから死なないだろう」
「つーくん、どうしたの?」
上から順に、古木、詩帆、隆盛、遼介である。無駄にイケメンなこの3人に殊更綺麗な鼓。
周りの視線は自然とその4人に向いていく。
「ああ、野崎先輩と柴先輩、...と、古木」
「なぁ俺の扱いちょっと改めようか」
「いや、下手なこと言うとすぐ鼻血出すから。鼻血出さないようにっていう俺の配慮だよ?」
「そうだったのか?ありがとう...ってなる訳ないだろ!」
「先輩、古木が怖いです」
「古木くんちょっとこっちきてくれる?」
「ひい?!先輩、やめましょうその顔!ね?!」
ともだちにシェアしよう!