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夢ノ内高校体育祭 開催 4
詩帆が下に降りるのを見届けた後、遼介は鼓をよいしょと軽々しく抱き上げた。
「?!」
「つーくん軽いね。この間の呪いの手紙のせいで体重減った?」
「いや元からこの体重でs...じゃなくて、なんで抱き上げてるんですか?どこに行くつもりですか」
「つーくん知らない?生徒会には特別に「生徒会専用観覧席」があること」
「知ってますけど、まさか」
「そのまさかだよ。隆盛、行こう」
「あぁ」
目をまん丸く見開いて固まり、すぐに暴れ出す。
そんな所に行けば注目されるのは当たり前だし、まず生徒会に入ってもないのにそこに座ればブーイングも喰らうだろう。
生徒会長の恋人だからといって、それは許されるじゃない、と鼓は冷や汗を流す。
「離して、降ろしてくださいっ」
「離しません、降ろしません。じっとしててね〜」
「柴先輩も何か言ってください!」
「涼川君、ファイトだ」
「今別に応援いりませんっ、それは俺が出てる競技の時に言って欲しかった!」
「つーくんエレベーター乗るよ」
「エレベーター?!どこに連れていく気ですか?!」
「来賓席の横」
3階の来賓席はBOX席になっており、地区ごとや学校ごとに座れるようになっている。それも部屋のように区切られているのだ。
そのうちの一つに生徒会専用の席があるのだ。
鼓は存在は知っていたものの、場所は知らないのである。そこがどれだけ豪華なのかも。
「や、いやだ!」
「はいご到着〜」
連れ去られ、観覧席に到着する。その豪華さにまたもや目を見開き、
(権力行使し過ぎだろ。観覧席あるのは知ってたけど何この豪華さ、ありえない)
と思いっきり毒づいた。
BOX席はホール内を一望できるよう大きな窓が張っており、それをボタンで開閉することが出来る。カーテンも電動だ。
さらにはマイクもあり応援することも可能。
冷蔵庫、クーラー、仮眠用ベッド完備の一部屋がそこにあった。
「......」
じと〜と遼介を見上げる。遼介は苦笑いをした。
「つーくん...言いたいことは分かるけど、ね?俺も隆盛も詩帆も「生徒会」だからさ、ここにいないと行けないんだよ。つーくんにもしもの事があっても動けないんだよ」
遼介は、つーくんが心配なんだ...と憂いの表情を見せた。
だが鼓はそう簡単に誤魔化されない。
(もしもの事があったらって、もしもの事がある前提なんだ?)
心配するだけではここまでしないだろう、と鼓は読んだ。
「納得してくれた?」
「納得(仮)」
「なにそれ?」
適当に返事をした。
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