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夢ノ内高校体育祭 開催5

観覧席から見る競技は見易く、文句を言いつつも鼓は満足していた。 「ほらあそこ、詩帆だよ」 指をさされ見てみれば、体はカチカチに固まっているくせに顔異様な常な笑顔が張り付いているという詩帆がいた。なんとも不気味である。 「野沢先輩大丈夫でしょうか...」 「応援しよっか。マイク使ってさ」 「はい」 壁にかけられたマイク。遼介はそれに向かって詩帆に呼びかけた。 「3年2組、野沢 詩帆さん」 生徒会長の声だ!と上がる歓声と悲鳴。それに伴い詩帆の顔は白くなった。観覧席の方を見て、器用にも片頬だけをあげる。 「負けたら、生徒会から免除だ。勝て」 詩帆の顔面は白を通り越して土気色になった。使う用途が違うのではないか。 (先輩、それ脅すためのものじゃなくて応援用ですよ...ね?) 「あ、アイアイサー!!!」 謎の敬礼、そしてピストルの音と共に綱引きが始まった。 身長は平均だが、細くあまり筋肉のなさそうな詩帆。正直、その見た目のあまり勝てそうな要素がないように思われる。 鼓もそう思ったのか、再度野沢先輩、大丈夫でしょうかと声をあげる。 「そうか、涼川君は知らないのか」 その問いに答えたのは隆盛だ。隆盛はじっ...と詩帆を見つめている。 「?」 「詩帆は、ああ見えて...」 1番後ろには詩帆が居り、縄を引っ張る準備をしていた。体に縄をまきつけます姿は頼りない。 「かなりの剛腕だ」 だが次の瞬間。縄が突如一方に引っ張られ、相手チームが一斉に転んだのだ。ものの数秒の出来事である。 「よっしゃぁぁぁ!!!」 買ったチームから歓声が上がる。体育館内は一気に盛り上がりを見せた。 ピピーと笛が吹かれ1回戦が終わり、勝ったのはもちろん、詩帆達のチーム。 鼓は幾度か目を瞬かせ目を擦り頬を数度叩いた。横にいた遼介と隆盛はそれを見てクスリと笑った。 「夢じゃない...」 「夢なわけないよ。つーくん、今から起こることしっかり目に焼き付けてね」 そこから鼓は、目を見開いていることしか出来なかったのである。

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