180 / 435

夢ノ内高校体育祭 開催 10

遼介から解放され、見回すといなくなっていた詩帆と隆盛。 「先輩、あの2人は?」 「生徒会の仕事こなしに行ったよ」 「......そうですか」 その後、クラスメイトAは本当にありがとう!と鼓と遼介に礼を言い退出した。 鼓は話が分からず、ましてや自分が障害物競技に出ることなど知らない。?を頭の上に浮かべていた。 (なんでお礼を言われたんだ?まさかまた何かしたとか...) チラと遼介に目を向けると、遼介もこちらを見ていて慌てて視線を逸らす。何故か、視線を逸らさなければいけない気がしたのだ。 間を空けると、またハイテンション放送部による実況が始まった。 『さぁ次の競技へ行ってみましょう!』 『次の競技は...うおおおお!障害物競走だだあああ!』 何故か観客席からは歓声が上がる。 (この競技って歓声上がるようなものだっけ?むしろ悲鳴が上がると思ってたんだけど) 鼓が首を傾げて、 『なんと今回は!2年生で出るはずだった選手が棄権!騎馬戦で地獄を見せられたとの事!』 『うおぉええぇ...』 『なんでお前もグロッキーになってんだよ!...あ、お前も出てたのか。おつかれ。 それはさて置き!そんなこんなで出てくれる選手はなんと!』 『涼川 鼓 くんです!』 頬がピクリと引きつった。 歓声がまた大きく上がる。 放送部によるそんな話を聞いて、すぐさま遼介の足を踏みつけた。 「せ ん ぱ い?」 「ぐ、ぅ......い、た...い......つ、つーくん?」 「...んで俺が出ることになってるんですか!!!!!」 「え、俺が言ったから」 (平然と言ってんじゃねぇよこの暴君王子!俺女装するの嫌だって言ったよね?女装させるのはちょっと...ってあんたも言ったでしょうが!!!) 心の中にギュッと暴言を詰めて、遼介を無言で揺さぶる。 「ご、め、ん、ってば、ね、つーくん。だっ、大丈夫だか、ら、ほ、ら、行ってき、て!」 揺さぶられる中遼介は必死に言葉を紡ぎ出した。もう決定事項なんだ、と観念したくない気持ちも山ほどあるが、仕方なく鼓は遼介を離す。 「じゃあ先輩、」 フラフラで椅子に座る遼介に一言。 「ここに帰ってきても、先輩は俺の隣に座ることを禁じます。触るのもダメですから」 「?!ちょ、ま、つー…」 開け放たれる扉。遼介の手が届くことなく、閉まる。 残された古木は、先輩ドンマイです、と手を伸ばしたまま固まる遼介を励ました。

ともだちにシェアしよう!