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夢ノ内高校体育祭 開催 11
係の人に促され階段を降りていく。
(なんなのこの歓声。もしかして俺が女装するってこと喜んでるの?「涼川の女装とかキモイに決まってるじゃん!辱め受けろ!」的な感じ?ありえない、最悪!糞共!)
鼓は自分の容姿が万人受けすることを知っている。知ってはいるが、自分は人からとことん嫌われていると思っているのだ。
この歓声が「鼓のファン」によるものだとは思いもしない。
「先輩...許さん」
下に降りた途端にその歓声はピタリと止んだ。
今から今後の学校生活を左右する(メイド服に当たったやつは1年間からかわれる)、運命のクジが行われるのだ。それはそれは緊張している。
誰もが固唾を呑んで見守っていた。
―主に鼓を。
『さぁさぁさぁ!今、障害物のクジが行われようとしています!』
『うおおおぉおお!カメラ近づけえぇぇ!』
(は、カメラ?ちょっと、この時点で公開処刑?しかもカメラって本格的過ぎるだろ。なにあのプロ仕様)
3年生から順番に引かれていく。残り物には福がある...!と鼓は信じて待っていた。
これに詩帆と隆盛が細工をしていることを知らずに。
手順としては、まず鼓を最後にすることから始まる。
最後の1枚はクジが入っている箱の中の側面に張り付いており、普通では取れない仕組みだ。
鼓が入っていない、と申し立て、係りの者が確かめその紙をはがし、どうぞと再度箱を差し出す。
という事だ。
たった5分少々でこの仕組みを考え施行した2人、さすが生徒会役員と言うべきか。
3年のクジ引きが終わり、2年に移る。
鼓が係が持っている箱へ手を伸ばしたが、スルーされそのまま1年の方へ。
「.........ぇ」
意図せず鼓は固まる。
(......そこまで俺のこと嫌いかよ。ああそうですか、じゃあご勝手に)
ムキになるのも疲れると感じ無表情に黙る。
「あ、すみません!」
わざとらしくUターンしてきて、鼓の元へやって来る。苛立ちを隠し大丈夫ですよ、と苦笑いし(だが腹黒)箱に手を入れる。
しかしそこには何も無い。鼓も首を傾けた。
「...何も無いんですけど」
「あれ?」
ゴソゴソと係が箱を弄る。
「壁にくっついてました。どうぞ」
再度手を突っ込み、鼓は紙を引き抜く。
「...うわ」
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