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夢ノ内高校体育祭 開催 22
「ほら!行った行った!」
「…!っと、古木!」
古木に背中を押されドアまで連れていかれる。
「俺は別に、」
「別にならそんな目で先輩みつめねーだろ!」
「目…?」
「寂しいって目!なんでこっち向いてくれないんだろうって目が物語ってんだ!」
そんな訳ない、と鼓は反論しようとしたが古木の真摯な目にやられ口を噤んでしまう。
(確かに、寂しい...けど……でも、)
未だ葛藤する鼓を容赦なしにドアの向こうに押し出す。よろけて、尻もちを着いた。
「しっかり牽制してこい。んで、帰りはしっかり先輩と手繋いで帰ってこいよ」
「…」
上から見下ろす古木から逃げるように視線を逸らす。だが古木も膝を折って、鼓と視線を合わせてきた。
「俺から見てもお似合いなんだからさ。先輩が余所見しないよう捕まえてこい。まぁ先輩が涼川以外を娶るなんてありえないと思うけどな」
「.......う、ん。ありがとう古木」
鼓はいよいよ決心したようで、下に降りるために階段の方へ急いだ。
(...ってか娶るって、俺妻扱い?まだ結婚してないんだけど)
***
「あれ、涼川くん」
下まで行くと、先程と同様に待機している元クラスメイトがいた。よくよく見れば、なかなかに可愛い容姿である。まん丸い目に薄茶の髪はカールしていて、一見すれば女子のように見えた。
(こんな人クラスにいたっけ。前のクラスメイトなんてもう忘れたんだけど)
古木の情報を疑う訳では無いが、疑問に思ってしまう。
「前のクラスでも邪魔者だったのに、今も邪魔しに来るんだね。ホント嫌い」
(前言撤回。こんな奴前のクラスに居た以外考えられない)
ムッとした鼓に気づきもしないのか、聞きもしないことをつらつらと述べ始めるクラスメイト。
やれ自分の方が可愛いだの、先輩も気に入ってくれるだの。鼓が居なければ今頃は自分が恋人のはずだった、性格悪いくせして先輩の隣に居るだなんてありえない、たらしこんだんじゃないの、図太すぎ......etc.
(久々にこんな悪口言われてる気がする。あ、でもチビに何言われても気にすることないよね。どうせ、狭量の、腹黒の、馬鹿、だもんね。あ、腹黒なのは俺も一緒か)
聞き流しているとさすがに相手も気づいたのか、なんだよその態度!と鼓に掴みかかろうとして
放送委員2『次の走者はとうとう氷川 遼介が出ます!皆さんご注目を!』
直ぐにやめ、かなりの猫撫で声で「氷川せんぱぁ〜い」と呼んだ。
(え、気持ち悪...)
鼓は相も変わらず腹黒だ。
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