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夢ノ内高校体育祭 開催 25

腕の中で揺れ運ばれながらぼんやりと遼介を見上げる。 下から見たとしても変わらぬ美形に思わず見惚れてしまっていると、視線に気づいた遼介もこちらを見た。 「名前呼んでくれて嬉しかった。ありがとう」 「あ、」 (そうだった、俺大声で先輩の名前呼んでたんだ...夢中になりすぎて忘れてた…) 「もう呼んでくれないの?」 「呼んであげません...特別、です」 「じゃあ、借り物競争で1等取ったらまた呼んで?」 物寂しいそうな顔で覗き込まれるとなんでも言うことを聞いてあげたくなる。 「...仕方ないですね」 「ありがとう。っと、言う訳で呼んでくれる?」 「え?」 気づけばゴールしており係にお題の紙を渡すところであった。あまりの速さに目を見張る。 「呼んでくれる約束だよね」 「っも、もう1つ条件追加!」 そう叫ぶと、遼介はクスクスと笑って鼓の額に唇を落とす。 「可愛いつーくんのためならそのくらい。 どんな条件なの?」 「えっと、えっと...」 咄嗟に口を付いて出てしまったのだが、ただの時間稼ぎなのだ。先程のは無意識で、遼介にただこっちを向いて欲しくて叫んだ言葉。 に戻れば恥ずかしいことこの上ない。 「...….....さっきの人、本当に覚えていないんですか...?」 絞り出した結果、なかなかに女々しい質問になった。 遼介は少し驚いた表情をしたが素直に答えた。 「覚えてない、というか。覚える必要性がなくなったんだ。父親にね、もうあの家との交渉は難しいから仲良くする必要はないって言われてて。だから記憶から消しただけだよ」 「…そう、ですか」 「まぁそれよりも、つーくんにあんな言葉をかける低俗は要らないから。名前を覚えてあげる義理もない」 (低俗…) 自分に向ける笑顔と、アレに向ける笑顔は随分と違う。 たが、それでも。 (俺以外の人に笑いかけないで欲しいって言うのは、我儘かな) 「…あの、いい加減降ろしてくれませんか」 「このまま居たいんだけどダメ?」 「これはさすがにダメですよ」 まだ降ろしていなかったのか。

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