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夢ノ内高校体育祭 開催 28

流石の鼓もキツかったのであろう、俯いて、 (自分から抱きついたんだろうが、何が抱きしめてくれてるだ馬鹿らしい。猿は所詮猿か。いや、猿が可哀想だよね。猿より底辺だもんね) 俯いて、毒を吐いていた。 再三遼介に引き剥がされる猿。 適当にを詩帆に引渡して自分は鼓の元へ。 その行動を見て1歩2歩と一応逃げる準備をする鼓を、遼介は意図も簡単に絡め取り腕の中に囲ってしまった。 鼓は逃げ場をなくしたじろぐものの、嫌そうな雰囲気は見受けられない。 「鼓」 珍しく普通に名前を呼ぶ。 「俺が好きなのは鼓だけ、他には要らない。だからそんな顔しないで」 (そんな顔って、俺今、どんな顔してるんだろう) 顎をクイと持ち上げられ目と目を合わせさせられる。遼介の瞳に映る自分は酷く痛々しい表情をしていた。 「寂しそうで、悲しそうな顔。泣きそう?」 「別に...」 (なんでもっと可愛いことが言えないんだろう...) 思わず可愛げのないことを言ってしまい後悔。だが、遼介は気にもとめずふわり...と微笑む。 「鼓大好き」 「...」 「俺が、鼓を一方的に好きになって付き合ってもらったんだから。周りにとやかく言われる筋合いは無いんだ。 俺が愛してるのは鼓だけ、こうやって抱きしめるのも鼓だけ、逃がさないように囲ってしまおうって思うのも鼓だけ。鼓から離れたら、死ぬだろうね」 それはどちらの意味なのか。生ける屍となるのか、この世からいなくなる方なのか。 遼介そ、どちらとも解釈でき尚且つ真意を見せぬ顔をした。 「だから...鼓を傷つけるアレには退場してもらおうかな」 「どういう、」 そう、遼介が口に出した瞬間。 どこからともなく八九座が現れ、猿の腹に拳を1つ入れ呻く間さえ与えず気絶させた。 「せんぱい?」 遼介によって鼓は目を塞がれており何も理解することが出来ない。その代わりに、フレンチ・キスを1つ、2つ。 「遼介って呼んで」 「や、だ...」 「照れ屋さん。そんな所も可愛いけど」 パッと手を離された頃には何もかも終わり、詩帆の元にいた猿は消え静寂がこの場を包んでいた。 「?」 「あぁ、あの子なら詩帆に言われて帰ったみたいだね」 (そんなこと、ありえないのに。嘘が下手くそなのか、なんなんだろう) だが少しの不安要素が消えたおかげか鼓の頬は少し緩んだ。 そんな中。各々の光景を見ていた古木は鼻血を流しながらも表情を強ばらせていた。

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