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夢ノ内高校体育祭 開催 33
(先輩、大丈夫だよね?)
これで遼介が負ければ、熱烈なハグ。かつ(鼓は知らないが)鼓へのハグも追加されている。
鼓が心配するのも無理はない。
憂いを帯びた表情をしながらも遼介を見つめていると、パッとこちらと目が合う。
遼介は鼓の気持ちが分かっているかのように優しく微笑みかけた。
“大丈夫、だよ”
口パクでそう言われ、鼓は意味もなく幾度となく頷いた。
自然と手が祈る形になる。
(先輩、頑張って…)
こういう時のための、マイクなのだが。なぜか今この時は忘れ去られていた…。
放送委員1『只今の順位を発表します!1位白組松本、2位紅組平松、3位白組松木、4位白組白石です』
(松率高すぎじゃない?)
確か日本で最も多い苗字は佐藤、鈴木、高橋のはずだ。
放送委員2『最終レーン、アンカーはスポーツ学科の松本と』
(また松本?!)
放送委員2『上野 悠と平 純、氷川 遼介です。激アツになりそうですねこの戦い!』
放送委員1『一般人とオネエとゴリラとイケメンの戦いですね!それでは、位置について!』
遼介はアンカーのため必然的に後の方になる。それまで固唾を飲んで見守らなければならなかった。
「魔王に囚われた姫みたいですよね」
「古木くん上手い!」
「勇者は先輩ですね!」
「遼介、ストーカーだけどね」
「あの、後ろの2人は何の話をしているんですか…」
始まった最後の競技。
鼓が焦る中、結果は五分五分である。
「つ、次先輩、古木!次先輩の番!」
「そうだな〜大丈夫だぞ涼川〜落ち着け、な?」
「お、おち、落ち着いてるっ、」
「「どこが」」
窓に張り付き部屋をうろつき、かと思えば祈りを捧げるように椅子に座って手を合わせたり。
全く落ち着かない姿に古木と詩帆が何度も声をかけていた。
「ほらもう走るぞ」
「見る!」
「じゃあ座ろうね〜」
ドキドキしながら、鼓は椅子に座、
「「……」」
らずまたもや窓に貼り付いたのだった。
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