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夢ノ内高校体育祭 開催 34
だってこっちの方が見やすいから、と鼓は窓から1歩も動かず、そのまま遼介の走りを見ることになった。
放送委員2『さぁアンカーにバトンが手渡されました!1番に渡ったのはオネ…、スポーツ学科の平だ!』
ヒュッと鼓が息を呑んだ。
(先輩…遼介、遼介、遼介っ)
手が握り締められ指が白くなっていく。
それを見た詩帆と古木までもが心苦しくなっていた。
「ぁっ」
2番手の遼介にバトンが渡る。
走り出した遼介のスピードは凄まじく、揺るぎないそのフォームに誰もが圧倒された。
1番手のオネエに迫っていく。
「りょ」
足が絡まり、
「す、け」
バトンが、
投げ出された。
「っ、はっ」
直ぐにでもバトンを拾いに行きたい衝動に駆られるも、鼓は奥歯を強く噛み締め耐えた。
(先輩を、信じなきゃ)
程なく遼介は立ち上がり転がるバトンをその手に走り出した。転んだ衝撃により走順は4番目、最後尾となっている。
差は歴然、勝てる距離ではない。
(先輩走って…、お願い、走って!)
掌に爪が食い込み赤くなる。そして鼓の瞳が少し潤んだ
瞬間、ガラス越しだが鼓と遼介の視線が交わった。
“大丈夫、だよ”
さっきと同じように笑いかけられると、鼓の不安は和らいでいく。
不恰好ながらも鼓も笑顔を返した。
ほんのの数秒ことであるがそれが遼介に火をつけたらしい、格段にスピードが上がる。
4位から3位へ、2位を抜かして、1位のスポーツ学科を、
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