214 / 435

ご褒美欲しさで頑張ったから 2

テーブルを挟んで、向かい合う。鼓が右へ動くと遼介も右へ。まさに臨戦状態だ。 (逃げ場がない。部屋は先輩がピッキングするから開けちゃうし先輩の部屋なんて論外。あと残ってるのはトイレ、脱衣所、風呂場…。 どれも先輩がこじ開けてきそうで怖いんだけど?!ああああ!どうするのこれ、本当にどうし、) 「鼓、」 「ひっ、ぎゃああああ!」 「!」 気づけば背後に忍び寄られており、慌てて逃げ出す。遼介の制止の声も聞かず飛びついたのは玄関だった。 鍵を開け、ノブを下へ押す。 (あ、あ、開かない?!) どういうことなのだろうか、ドアは開かずましてや押しても引いてもビクともしない。鼓の額に冷や汗が流れた。 ―遼介は、確信犯なのだろう。 「っ、なんで、開かなっ」 「はい、捕まえた」 「あ、」 足音なく迫ってきた遼介に、意図も簡単に捕まる。 「あ、」 軽々しく抱っこされ、それから逃げられないようにしっかり抱えられた。 「逃げるなんて、許さないよ?」 その言葉で鼓の顔に諦めの表情が浮かんでいく。もう暴れる気もないらしい。遼介の胸に頭を寄せため息をついた。 「…せめて…優しくして、下さい」 「」 遼介が何も言わないことで鼓は不安になったが、ただ単に悶え死にそうになるのを我慢していただけである。 「つーくん、どっちの部屋がいい?俺の部屋?つーくんの部屋?」 どっちでも、と答えそうになり一度逡巡する。 自分の部屋だと、寝る時毎回の如く思い出してしまうだろう、と。 (あとはもうひとつあるけど…) 「俺の部屋はつーくんのもので溢れてるし、 つーくんの部屋で「先輩の部屋が、いい……」え?」 「……先輩の部屋がいい。毎回思い出してしまうので、恥ずかしくて寝れません」 「なるほど、その場合は俺の部屋に寝に来れば「誰がわざわざ襲われに行きますか」ですよね」 「、あと…は…やっぱりいいです」 自室の戸を足で開け恭しく鼓をベッドに降ろす。 言ったきり口篭る可愛い恋人の髪にキスを落とした。 「なぁに?」 「…」 無言で枕を取ると、顔を埋め未だ立ったままの遼介に、上目遣いを使った。本人は無自覚でありタチが悪い。 「先輩の匂い、安心する、から、ここがいっ」 「反則」 「、っ」 降るキスの雨に、鼓は今度こそ思考を奪われていった。

ともだちにシェアしよう!