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腐男子K.Hの話 2
side 慶
涼川はよく電話している。理由は、よく知っているのだが…
「大丈夫ですよ、はい、……あ、夜ご飯は何がいいですか?………わかりました、じゃあそれで。勉強頑張ってください」
休み時間に度にかかってくる電話。涼川が常にポケットに電話を入れてる訳はこれ、恋人からの着信にすぐ気づけるようにするためだ。
まるで熟年夫婦みたいな会話に俺も顔が…いや、なんでもない。
「終わった?」
「うん、終わった」
「毎度毎度ご苦労さま」
「…」
俺はいつも思ってしまうのだ。電話、流石に面倒にならないか?と。
元々、腐男子と言ってもリアルにはあまり目覚めなかった俺。この2人に出会って3次元の良さに気づいたわけだけど。
でもさ、そんな束縛系大富豪スパダリストーカーなんていると思わないじゃん?そんなに電話してくるなんて、小説の中だけかと思ってた。
事実は小説よりも奇なり。
今まさに、目の前にそんな空想カップルいたんだよなぁ。
涼川が電話を面倒くさがることも、鬱陶しがることもないことは重々承知だ。
だって、電話がかかってくる度に嬉しそうな顔で、さも愛おしそうな顔で、電話に出るから。
「結婚式、呼んでくれ。俺が友人代表としてスピーチするから」
「結婚しない」
「指輪してんだし、もう結婚したも同然だろ」
「してないってば」
「会話ももう熟年夫婦みたいだし。いや、夫夫か」
「なんか漢字予測できた。古木うるさい」
ふん、とそっぽを向いてしまう涼川。ちょっとからかいすぎた?と思いつつ、これは照れなのだろうとも思う。
ピリリッ
音がして、俺の携帯にも、電話じゃないけどメールが来た。
『ちゃんと古木くんも呼ぶから安心してね。あと、つーくんは白無垢とウェディングドレス、どっちが似合うと思う?』
差出人は今し方話題にされていた本人だ。
噂をすればなんとやら…いや、これ盗聴器で聞かれてたタイプだな。
盗聴器、盗撮。普通は怖いストーカーでも、涼川からすれば大切な恋人だから、涼川が幸せならそれでいいかな〜と考えてみたりした。
「なぁ、涼川って白無垢派?ウェディングドレス派?」
「…なにそれ?もしかして、今のメール先輩からだったの?!」
「ちゃんと古木くんも呼ぶから安心してね。あと、つーくんは白無垢とウェディングドレス、どっちが似合うと思う?
だってさ」
「〜〜〜〜!」
思わず大笑いしてしまった。顔は真っ赤に染ってるくせに、なんか嬉しそうだったから。
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