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海外旅行は”でーと“にはなりません 2
「なら、人目が気にならないところに行けばいいんだね?」
「は?」
「そうだな…結構堂々としてるのはフランス・イギリス辺りだけど……つーくんに本場のフランス料理食べさせてあげたいからフランスかな。観光にもいいし」
「あの、なんの話しをしているんですか?」
話の脈略が見えず困惑する。何故デートの話から飛躍して海外の話になるのだろうか。
「デートの話だよ?」
(でーとと、海外になんの繋がりg…………わ、かった……)
流石鼓、素晴らしい頭の回転の速さで謎を解いてしまったらしい。
「でーと、って」
「海外だったら、いいでしょ?まだ日本は差別的だからね」
いいわけあるか!とツッコミたいのを抑え引き攣る笑みを作る。かなり不格好だ。
「海外はちょっ、と…」
「心配しなくてもお金は全部俺が出すよ。パスポートも一緒に作りに行こう?つーくん英語得意だし、フランス語も出来るよね?」
「でも…」
どうにかして断る理由を考える。どうやった所で遼介に勝てるはずもないが、鼓は海外には行けない深いワケがあるのだ。
(そっちの地方は特にダメ。でも断る理由がないんだよね、正直行きたいと思ってるし)
次第に鼓の思考が、デートに行きたいのほうへ傾いていく。
ちなみに2人の世界に入っているため気づいていないが、周りはかなり野次を飛ばしている。
「お似合いだな!」「結婚式呼んでくれよ!」「美男美男カップル!」等々……。
「先輩、」
「そう言えばもう遼介って呼んでくれないんだね」
「」
また話が飛躍し今度は脳みそごと固まる。ついでに息も止まっていた。
「ハッ…そ、その話は後でです!俺は国内でーとがいいです!海外に行くのはハネムーンでお願いします!」
「…ハネムーン行ってくれるんだ」
さらり、とんでも発言をしたにも関わらず鼓はチャイム鳴りましたよ!と遼介を自教室へと追い返した。
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