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服を買いに 1
結局、2人とも7時頃にきっちり起き、朝食(鼓だけは相も変わらず3人前くらい)を食べ、8時半丁度にリビングの窓で待ち合わせをした。
「ごめんつーくん、待った?」
「あ、…いや、俺もさっき来たところなんで」
「そう?じゃあいこうか。まずは服選びに行こう」
「はい」
「楽しみだね」
「…実は、楽しみすぎて寝れなかったんです」
「ホント?俺もだよ」
笑って差し出された手を握り、茶番は終わる。手は握ったままだ。
(うん、何これ?)
「…、意味あるんですかコレ」
「意味は無いけど、楽しいでしょ?」
それなりに、と鼓は素っ気なく答えた。
実際には素っ気ないのではなく、遼介の私服にドキドキしていることを隠すため、そのような口調になっているだけだ。
まぁ、頬が紅潮しているためバレバレだが。
八九座が運転する車が来、手を繋いだまま嬉々として乗り込む。
「どこの服屋へ?」
「Nブランド」
「………………イマ、ナント、オッシャイマシタ?」
「(なんでカタコト?)Nブランドだよ」
Nブランドと言えば、VIPからセレブ御用達の高級ブランド店である。1つでも持っていると羨ましがられるそのブランドは、氷川グループが提携していた。
喉から手が出るほど欲しがられるが、勿論値段は凄まじく、普通の人では手を出すことも出来ない代物。
そこへ連れていかれるとなると、鼓は顔を青白くさせるしかない。
「せ、先輩!」
「遼介ね」
「っ、遼介!俺そんなお金持ってな………持ってません!」
「…もうそこまで行ったら敬語取れても良くない?お金は俺が払うから大丈夫だよ」
「そ、そんなこと言われても…」
そして、鼓はあることに気づく。
(遊園地のチケット代、どうなってるの。その場で買うとか考えて結構お金もってきたけど…確か結構な値段だったはず)
まさか遼介がその場で買うはずがない。
もしやコレもかと焦り遼介に問いただした。
遼介は淡々とチケットを財布から取り出し鼓に渡した。よりによって、フリーパスの時間短縮チケット付きだ。
「…遼介、」
「それ以上言ったらキスで塞ぐ」
「ヒュッ…」
口から空気だけが漏れる。しかし、鼓が抑えきれるはずもなく、突っ込む。
「散財癖直して下さい!俺だってお金払えるんですからね!ってか払われてばっかりは嫌です!」
「はい言った。それ以上言ったからキスする」
「No!Don't come!Go away!(ノー!来ないで!あっちいって!)」
「Quietly(静かに)」
「〜〜〜〜!」
鼓のプライドvs遼介の散財癖。さぁどちらが勝つのか。
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