231 / 437
某ネズミの国でお揃いの物を 2
「先輩!ネ、ネズミいました!」
某ネズミの国のゲートに入った途端、鼓は走り出した。その先には某キャラクターが子供たちと写真を撮っている光景がある。
「遼介ね。一緒に写真撮る?」
「撮りたいっ、です!」
携帯を渡し鼓はネズミの服の裾を引っ張り撮影を強請る。写真を撮り終えたネズミは鷹揚と頷いて抱きついていいよの体勢を取った。
「〜〜!」
鼓は声にならない歓声をあげ、嬉しそうに某ネズミに抱きついた。
その光景に身悶えそうになるのを、遼介は堪え、そして、忍ばせておいたペン型カメラで盗撮をした。約30枚ほど。
(つーくん可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い、)
「はい、笑って」
何枚か撮ると、ネズミは鼓の頭を軽く撫で、手を振り帰って行った。
今更自分がはしゃいでいたことに恥ずかしくなったのか、鼓はその場で小さく手を振り返すのみ。
そんな行動も遼介のドツボを抜いているとは梅雨知らず。
「ありがとうございます、遼介」
遼介の元に帰ってきた鼓は少し頬が赤らんでおり、視線を合わせようとしない。余程恥ずかしかったようだ。
「大丈夫、つーくんが楽しんでくれるなら」
「すでにかなり楽しいです!それで、どこに行きますか?」
「ん〜、クマのところとかどう?」
マップの黄色いエリアを指さすと、直ぐに鼓は食いついた。
「クマ!行きたい!!」
「(あ、敬語取れた)」
可愛いはしゃぎ方をする恋人に思わず遼介の頬が緩む。もちろん、盗撮済みだ。
その恋人がアイス店の方にキラキラとした目を向けているのも、承知の上である。
色とりどりのアイスたち。それをちらちら見る鼓。遼介は財布から札をそっと取り出した。
「アイス、食べる?」
「……食べて、いい?」
気まずそうに、でも、どこか嬉しそうに鼓は遼介に尋ねた。もちろん答えは
「もちろん、つーくんのためならいくらだって払うよ」
ともだちにシェアしよう!