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某ネズミの国でお揃いの物を1

徐々に某ネズミの国に近づくにつれ、鼓の興奮は増していった。大きな城は外からでも良く分かり、その城一つにさえ鼓は目を輝かせている。 遼介はそれをにこやかに見守り、まだ全部見えてないよ、と鼓に声をかける。 「でも、でもすごいですよ!すごくお城です!」 「すごくお城」 「すごくお城です!」 語彙力のかけたその言葉にどれだけ鼓がわくわくしているのかが伝わってくる。遼介はただただ可愛いなぁ…と窓の外を見つめる鼓を見ていた。 「つーくんこういう場所に来たことないんだよね?」 何の気なしに遼介は昨日と同じことを聞いた。そして、ああこれ昨日言ってたねごめん、と返そうとして、次の鼓の返答に黙った。 「ないと思います!だから余計楽しみで!!」 「思います、なんだ」 昨日と違う。昨日は行ったことがない、と断言していたにも拘わらずこの返答。鼓は秀才だ、自分の言ったことをそうそう忘れる性格ではない。鼓は…苦虫を嚙み潰したようなきぶんになった。 (くそ、はしゃぎすぎた、) 「ほら、小さい頃の記憶って曖昧じゃないですか、だから思いますって言ったんです。それによく思い出したらなんとなく記憶にあって。それに俺のこと調べあげてるなら経歴くらい知ってるはずじゃ」 鼓は、窓の反射越しにこちらを見る遼介を見た。 「…なんでだろうね、経歴、でてこなかったんだ」 「…………そうなんですね、じゃあ俺の記憶違いかもしれないですね。やっぱり行ったことないのかもなぁー」 微笑む遼介は知らない、鼓が心の中で酷く動揺していることを。 (出でこなかったって、どこからどこまで…? ネズミの国のことだけなの、かな…少し、危ないのかもしれない) 「遼介は来たことあるんですか?」 自然な流れで鼓は話題を変えた。遼介には丸分かりだろうが、特に深く追求してこない辺り鼓から話し出すのを待ってくれるようだ。 「俺は…あー、多分、二回くらいかな」 「なるほどです。いつもテレビで見てすごいなーって思ってたので、ほんとに来れてうれしいです。ありがとうございます遼介」 「どういたしまして。お礼はキスでいいよ」 遼介は自分の頬をトントンと指で叩くが、鼓は窓から視線を外しほんの一瞬ちらりと見ただけに終わる。 あ、それとも唇をご所望かな??と遼介がおどけると 「!!」 鼓は体をさっと振り返らせ、軽いキスを遼介に施す。鼓は真っ赤になり再び窓の外を眺める態勢に戻った。遼介は目を丸くし、なんとも言えない蕩けた顔でにんまり笑っていた。

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