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某ネズミの国でお揃いの物を 5
(触り心地最高……このまま寝たい)
クマに埋もれること十数秒。
「買う?」
その言葉で即座にクマから遠ざかった。
デカクマの値段は、ゼロで目が潰れそうといえば分かってもらえるだろうか。
そんなものを易々と「買う?」と聞かれれば鼓は退くしかない。下手にずっと抱きついていれば、鼓の喜ぶ顔が見たいからと遼介は購入するからだ。
絶対に。
「い、大丈夫です」
要らない、というのはクマに失礼な気がしてやめた。
「そう?」
「こんなの置くところないし…」
「それならいっそのこと俺の部屋においでよ」
「それは現在の先「遼介だってば」、遼介の部屋にですか、みやび荘にですか」
「広さで言うとみやび荘の方がいいけど、広すぎるとつーくんが遠く感じられるから今の俺の部屋に来て。荷物やぬいぐるみはつーくんの部屋に置いてさ」
「嫌です、毎夜毎夜イタズラするでしょ」
「なんでするって分かったの」
「遼介の事を俺が分からないとでも思ってるんですか」
「思ってないよ、つーくん俺の事大好きだからね!」
「それは遼介もでしょ!」
暫し沈黙の後、鼓はひどく赤面した。なんて小っ恥ずかしい会話なんだ、バカップルにも程がある。
周りですらクスクスと微笑ましそうに笑っている。……仲のいい兄弟だ、と。
「…、つぎどこいきますか」
「絶叫マシン乗りたいかな、つーくんが良ければだけど」
「乗ったことないので乗りたいです」
なんだか気まずい雰囲気になってしまい視線を逸らし合った。
鼓が一歩を踏み出し先に行くと遼介は踵を返して逆方向へ。店員を外面用スマイルで捕まえこう続けた。
「すみません、これ買います」
「ちょ、遼介?!」
指さしたのはデカクマである。
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