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某ネズミの国でお揃いの物を 8

鼓の絶叫が屋敷に響き渡る。 少しでもオバケの姿が見えたり、声がしたり、驚かし要素がある度に鼓は横にいるニヤついた彼氏に飛びついた。 コースタータイプのため当然ガクンと動いたり激しく滑走したりするのだが、それも鼓を怖がらせる原因になっている。 コースターが動くと見えない角度の者が突然現れたりして、幾度となく気を失いかけた。 暗闇の中ぼんやりと浮かび上がる髑髏、美しい歌声を披露するおぞましい姿の花嫁、踊るゾンビたち、笑うかぼちゃ……。 終わる頃には鼓は生気がなくなり空を見つめていた。 「つーくん大丈夫?」 「……」 「おーい」 「……」 返答がない、生ける屍(口角が少し上がっているのが怖い)とはまさにこの事だ。 ふらふらしながらコースターから降りるとそのままベンチに座ってまた動かなくなってしまった。 大丈夫かと遼介が本気で心配し始めたのは鼓が動かなくなって5分後のことである。 「オバケ嫌い…」 「うん、まさかつーくんがここまで無理だとは思ってなかった。ごめんね」 「1つ分かったことがあります……俺絶叫マシンはいけそうです」 「そうなんだ、乗る前に知れてよかったね」 「オバケの要素はいらなかったと思いますけど!!!!!」 「あははは」 鼓が睨みつける先には髪型の崩れた遼介がいる。 先程のコースターのせいで髪型が乱れてしまったのだ。きっちりとした七三分けではなくなり、何故か色気が増す。 直視しないでおこうと鼓はわざとらしくそっぽをむくことに徹底した。 後に、遼介のセットされていない髪型を見たのは鼓だけだと知るのは随分あとのことである。

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